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欧州連合(EU)の公式サイトに「ヘンプ」が登場

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欧州とヘンプのこれまでの歴史

 

EUの前身である欧州共同体(EC)の時代から、農業共通政策(CAP)の補助金スキームとして、1970年から、フラックス(Flax)とヘンプ(Hemp)の項目が存在していました。

1990年代にヘンプが環境と健康によい農作物であることが見直され、欧州連合(EU)が誕生した1993年から英国で栽培がスタートし、94年にオランダ、96年にドイツ、オーストリア、そして98年にイタリアと拡大していきました。

 

このヘンプ栽培復活は、EU規則が欧州各国の法律よりも上位法(優先される)であることを利用して、合法的に栽培が可能になったのです。まさにヘンプは、EU誕生と共に新しい歴史を刻んできたのです。

 

そのEUが公式サイトに、「ヘンプ」のページを設けました。

 

これによると、穀物、米、油糧及びたんぱく源作物、砂糖、オリーブオイル、ワイン、アロマワイン、蒸留酒、ホップ、コットン、タバコ、ヘンプの順に紹介されています。栽培復活から25年以上の時を経て、一般的な農作物としてようやく認知されたといえるでしょう。

 

 

https://ec.europa.eu/info/food-farming-fisheries/plants-and-plant-products/plant-products_en

 

そして、ヘンプのページを開けると、次のように記載があります。

全翻訳しましたので、ぜひご一読いただければと思います。

EUにおけるヘンプの生産

ヘンプはヨーロッパ全土で栽培されている作物です。近年、EUではヘンプの栽培面積が2015年の19,970ヘクタール(ha)から2019年には34,960ヘクタール(75%増)と大幅に増加しています。同じ期間に、ヘンプの生産量は94,120トンから152,820トン(62.4%増)に増加しました。フランスが最大の生産国で、EUの生産量の70%以上を占め、次いでオランダ(10%)、オーストリア(4%)となっています。

 

図:EUのヘンプ栽培面積

 

ヘンプ栽培は欧州グリーンディール目標に貢献する

欧州連合は、2019年にグリーンディールと呼ばれる、気候変動に対応するための政策を発表し、「2050年までに温室効果ガスの排出ゼロ」を目指して政財界全てを挙げて取り組んでおり、社会構造から経済構造、さらには、そこで暮らす人々の生活様式にまで変えてしまう程の巨大な社会変革が始まっています。

そしてヘンプには、このグリーンディールを成功に導くための様々な環境面でのメリットがあります。

 

炭素貯蔵:

1ヘクタールのヘンプは、915トンのCO2を吸収します。これは若い森林が吸収する量に匹敵しますが、生育にはわずか5カ月しかかかりません。

 

病害サイクルを断ち切る:

ヘンプは、輪作に使用することで、病害サイクルを断ち切ることができます。また、ヘンプの植物は生育が早く、遮光性が高いため、雑草が生えてこないのです。

 

土壌侵食防止:

ヘンプの密生した葉は、自然の土壌被覆となり、水の損失を減らし、土壌侵食から守ります。ヘンプは発芽後わずか3週間で地面を覆います。

 

生物多様性:

開花サイクルは通常7月から9月の間で、他の作物からの花粉の生産がない時期と重なります。ヘンプは大量の花粉を生成します。また、鳥の避難場所にもなり、ヘンプ種子は動物の餌にもなります。

 

殺虫剤の使用が少ない、または全くない:

ヘンプは自然界の捕食者がいないため害虫の影響をほとんど受けず、殺虫剤、除草剤、殺菌剤の使用をほとんどの場合で回避することができます。

 

関連情報

欧州グリーンディール

https://ec.europa.eu/info/strategy/priorities-2019-2024/european-green-deal_en

 

ヘンプの用途

 

  1. 繊維産業(ヘンプ繊維)

ヘンプ繊維は、リネン(亜麻)によく似ており、繊維業界ではヘンプ繊維を使用することへの関心が高まっています。欧州委員会は、循環経済行動計画の中で、繊維部門をより環境に優しく持続可能な経済への移行の礎の一つと考え、新素材や新しい経済モデルを模索するよう関係者に呼びかけています。このため、欧州委員会は、より持続可能で革新的な循環型経済モデルの構築を目指し、持続可能な繊維に関する包括的な欧州戦略を提案する予定です。

ヘンプ繊維は、繊維産業にとって持続可能な原料です。

 

  1. 食品・飼料(ヘンプシード)

ヘンプシード(麻の実)には、高レベルのタンパク質と、かなりの量の繊維、ビタミン、オメガ3、ミネラルが含まれています。そのため、脱殻したヘンプシードは食用として、殻付きのヘンプシードは動物用の飼料として使用されています。

 

  1. 建築(ヘンプ繊維)

建築分野で使用されるヘンプ繊維製品は、主にライムヘンプコンクリート(LHC)、ヘンプウール、ファイバーボード断熱材の3つです。

建設部門は、エネルギー消費の40%、GHG排出の36%を占め、そのうち75%が廃棄されています。このため、二酸化炭素を排出しない、あるいは炭素固定を行う建築方法や材料が求められています。

ヘンプコンクリートは、材料に蓄えられた炭素量が生産時に発生した排出量を上回り、建物の寿命まで炭素を蓄え続けるため、炭素隔離材と言えます。欧州グリーンディールで掲げられている2050年までのカーボンニュートラルの達成には、建築分野のエネルギー効率の向上が重要な役割を果たします。

ヘンプは、この目標達成のために重要な役割を果たすことができます。

ライムヘンプコンクリート、ヘンプ・ウール、ファイバーボード断熱材は、そのエネルギー効率の良さから、建築分野で使用されています。

 

  1. 紙の製造(ヘンプ繊維)

ヘンプ繊維を使って紙を作ることには、ヘンプの茎が成熟するのに5カ月しかかからないこと、ヘンプの紙は必ずしも有害な漂白剤を必要としないこと、ヘンプの紙は78回リサイクルできることなどの利点があります。

ヘンプ繊維の紙は、木材パルプから作られた紙よりも持続可能な代替品です。

 

  1. その他の用途

ヘンプ由来の製品は、さまざまな業界で、さまざまな目的で使用されています。プラスチックの環境への悪影響から、メーカーは代替品を求めています。軽量で耐久性に優れたヘンプは良い選択肢です。プラスチックの代替品として、ヘンプ由来の製品は、自動車製造、鉄道、航空、航空宇宙などのさまざまな分野で使用されています。

 

また、化粧品(オイル、ローション、シャンプーなど)やエネルギー生産(バイオ燃料)にも使用されています。また、ヘンプに含まれるカンナビジオール(CBD)は、化粧品、健康、食品など多方面で利用されていることから、その生産・販売にも関心が寄せられています。

202011月、欧州連合司法裁判所は、合法的に生産されたCBDの販売がEU法で認められると判断しました。

 

定義と規則

ヘンプ(Cannabis sativa Linn)は、共通農業政策(CAP)に基づく規則によれば、テトラヒドロカンナビノール(THC)のレベルが非常に低いアサ(Cannabaceae)科の品種です。

ヘンプは主に産業用に栽培されており、EUカタログには75種類のヘンプ品種が登録されています。THC含有量が非常に低いため、CAPの規則に準拠したヘンプはマリファナの生産には使用されません。

 

EU規則1308/2013の第189条に従い、現在、すべてのヘンプの輸入には輸入許可証が必要となります。さらに、

  • CNコード5302 10に該当する生原料のヘンプは、THC含有量が0.2%を超えないこと。
  • 播種用ヘンプ種子には、当該品種のTHC含有量が0.2%を超えていないことを証明する書類を添付しなければならない。
  • 播種に使用されないヘンプ種子は、EU諸国の認可の下でのみ輸入することができ、認可を受けた輸入業者は、その種子が播種に使用されない状態に置かれていることを証明する書類を提出しなければならない。
  • EU諸国は、EU条約や国際的な義務に沿って、より制限的な規則を適用することもできます。

共通農業政策(CAP)で受けられる支援

ヘンプを栽培する農家は、CAPの地域別直接支払いを受ける資格があります。農家は、直接支払いの標準的な資格条件を満たすだけでなく、違法な作物がCAPの支援を受けられないようにするためのヘンプ特有の追加条件も満たす必要があります。

 

栽培されているヘンプ品種は、THC含有量が0.2%以下でなければなりません。

農家は、農業植物種の品種に関するEU共通カタログに掲載されている品種の認証済み種子を使用しなければなりません。このカタログには75種類のヘンプ品種が登録されています。

欧州諸国は、一定の条件の下で、ヘンプを栽培する農家にカップル支払(VCS、生産量などとリンクした支払)を行うことを決定できます。現在、フランス、ポーランド、ルーマニアではヘンプに対するVCSが実施されています。

 

また、ヘンプ栽培者は、CAPの第2の柱である農村開発措置で実施される支援の恩恵を受けることができます。関連するタイプの支援は、投資、知識構築、ビジネススタートアップ、イノベーション、サプライチェーンの組織化、有機農業、環境保護、気候変動対策を促進するように設計されています。

 

委員会と専門家グループ

農産物市場の共通政策委員会は定期的に会合を開き、欧州および非欧州諸国における市場価格、生産、貿易の推移などの問題について議論しています。また、委員会は欧州委員会が実施法を採択する際にも支援しています。

 

コットン(綿)、フラックス(亜麻)、ヘンプを対象とした耕地作物に関する市民対話グループは、欧州委員会がヘンプを含む繊維作物に関連するすべての事項について利害関係者と定期的な対話を行うことを可能にしています。

 

法的根拠

EU規則1307/2013 – 共通農業政策の枠組み内の支援スキームに基づく農家への直接支払いの規則を定める。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32013R1307

 

EU規則1308/2013 – 農産物市場の共通組織を定める。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32013R1308

 

EU委任規則639/2014-「農業植物種の品種の共通カタログ」に掲載されている品種の認証種子を使用する要件を定める。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32014R0639

 

EU実施規則809/2014-ヘンプのテトラヒドロカンナビノール濃度を決定するための特定の管理手段と方法を定める。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32014R0809

 

EU委任規則2016/1237およびEU実施規則2016/1239-ヘンプの輸入許可規則を定める。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32016R1237

 

EU実施規則2016/1239 – 輸出入許可証のシステムに関する欧州議会と理事会のEU規則1308/2013の適用規則を定める。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32016R1239

 

理事会指令2002/53/EC – 農業植物種の品種の共通カタログに関するもの。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32002L0053

 

理事会指令 2002/57/EC – 油・繊維植物の種子の販売に関するもの。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32002L0057

 

理事会決定 2003/17/EC – 種子生産作物に対して第三国で実施される実地検査の同等性、および第三国で生産される種子の同等性に関するもの。

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:32003D0017

 

関連リンク

耕作放棄地に関する市民対話グループ

https://ec.europa.eu/info/food-farming-fisheries/key-policies/committees-and-advisory-councils/civil-dialogue-groups/arable-crops_en 

持続可能な繊維製品のための欧州戦略

https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/12822-EU-strategy-for-sustainable-textiles_en 

引用:Hemp production in the EU

https://ec.europa.eu/info/food-farming-fisheries/plants-and-plant-products/plant-products/hemp_en 

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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