カナダの大麻生産大手であるCanopy Growth社(以下キャノピー)は、特定のCO2抽出方法を採用しているCBDメーカーは、同社に対しライセンス料や補償を支払う義務があると述べています。
キャノピー社は、英国を拠点とする医療用大麻製剤 サティベックスやエピディオレックスの製造メーカーであるGWファーマシューティカルズ社に対して、同社が保有する抽出技術に関する特許を侵害しているとして提訴しました。カナダを拠点とするキャノピー社は、マリファナの生産だけでなくCBD市場にも参入しており、この訴訟は、THCを含む大麻オイルだけでなく、CBDオイルを製造している企業にも幅広い影響を与える可能性があります。
特許関連を専門としているワシントンDCのLarry Sandell弁護士は、フォーブスの取材に対し「CO2抽出を行うすべての人が、この特許を侵害している可能性があります。どれくらいの数のCO2抽出業者が特許の主張の範囲外であるかは(現時点では)わかりません。それがこの問題を人々が気にかけるべき理由です。」と語っています。
誰が危険にさらされているのか?
この第一報を報じたウェブメディアであるマリファナ・モーメントは、「GW社が、この特許が無効であることを証明できない限り、キャノピー社は市場全体で広く使用されている抽出プロセスに対する独占的権利を持ち、この方法に依存する企業は訴訟のリスクにさらされる可能性がある」と述べています。
キャノピー社は、2019年にドイツのC³社(Cannabinoid Compound Co.)を買収した際に、米国特許を取得したと主張しています。
フォーブスによると、この特許は、2000年にAdam Muellerという発明者によって最初に出願されていますが、キャノピー社から米国特許庁へ提出された出願では、昨年12月4日に同社が傘下のドイツ企業であるSpectrum Therapeutics社の技術に対して合計1ドルを支払ったことを示していると報告しています。
特許、訴訟調整
米国特許庁は先月22日にキャノピー社に特許を発行し、キャノピーは同日、テキサス州の連邦裁判所に訴訟を起こしています。フォーブスが意見を求めた業界の専門家は、このタイミングは、キャノピー社が訴訟を起こす事を意図して特許を取得した可能性があることを示唆していると述べました。
この専門家は、「キャノピー社が訴訟で勝つためには、問題となっている技術の使用が、記録に残る初めての例であることを証明しなければならない」と言います。同時にGW社は弁護において、その抽出技術がキャノピー社の特許で主張されているものとは異なること、または最初の2000年の特許出願が提出されたときに特許に基づくキャノピー社の技術が「既知または明白」であったことを実証する必要があります。
GW社が、キャノピー社の知的財産を使用してCBDを抽出したことが判明した場合、キャノピー社は、米国のほぼ全ての主要な大麻オイルメーカーに対して特許侵害の申し立てを行う可能性があるとフォーブスは示唆しています。
権利は2022年に失効
この特許に関するキャノピー社の権利は、2022年半ばまでしか存続しません。しかし、その約18か月間でさえ、C02抽出技術の独占権は、同社に利益をもたらすと同時に、「暫定的に競合他社に萎縮効果をもたらす」可能性があるとマリファナ・モーメントは示唆しました。
ロサンゼルスを拠点とする大麻コンサルタント兼規制顧問のエイビス・ブルブリアン氏は、「この動きは、現在のところGW社のエピディオレックスによって独占されているCBD医療セクターに、キャノピー社が参入する準備をしていることを示している可能性がある」と述べました。
高レベルのCBD(1ミリリットルあたり100ミリグラム)を含むエピディオレックスは、米国食品医薬品局(FDA)から承認を得た最初の大麻由来の処方薬で、2種類の難治性てんかんであるドラベ症候群とレノックス・ガストー症候群に効果的であることがわかっています。
攻撃的かつ戦略的プレー?
「あるいは、ほとんどすべての既存の大麻企業の一部を所有するための非常に戦略的なプレーかもしれません。GW社が、この訴訟を和解または敗訴した場合、その時点でプレーヤー全員にとっての公平な試合になるでしょう。」とブルブリアン氏は、語ります。つまり、GW社の敗訴は、GW社だけでなく、産業全体の負けを意味すると言うわけです。
「私は、これが単なる小遣い稼ぎではないと思います。もしそうならキャノピー社は、GW社のような巨人に対抗するのではなく、より小さな競争相手を選ぶことを試みるでしょう」と、ブルブリアン氏は述べています。
GW社は、訴訟については認識している事を認めた上で、コメントを控えるとしています。