世界的なCBDブームや、応用できる最終製品のバラエティの多さも手伝って、ここ数年は世界中で爆発的に作付け面積が増えつづけています。 しかし、これまで禁止されていたモノを解禁する時には、必ず抵抗もあります。「禁止されている事」自体から利益を得ている勢力が居るからです。 こうした「既得権層が得ている利益」を、「解禁する事によって生まれる利益」が上回るという事が社会全体に理解された時に、逆転現象が起こります。 そうした逆転の潮流に、ポーランドが合流しそうです。
ポーランドの農務省は、最近発表された政府の2ヶ年農業計画で、産業用大麻のTHC許容量を1.0%とすることを推奨しています。
これが実現すれば同国は、世界的に普及しているTHCの許容値0.3%や、欧州のほとんどの国で認められているTHC許容値0.2%などを上回る水準に設定している、その他の国々の仲間入りをすることになります。
この提案は、収穫時にTHCを測定する「耕作地での検査」にのみ該当します。
欧州産業用ヘンプ協会(EIHA)のポーランド代表理事を務めるJacek Kramarz氏は、「これは農務省からの歓迎のメッセージであり、素晴らしい前進です。」と述べています。
画像:ヘンプトゥデイ本部でインタビューに応えるKramarz氏
最終製品への制限
これは確かに大きな前進ではありますが、「ポーランド政府は、最終製品のTHC制限の問題にも対処する必要がある」と、Kramarz氏は述べています。
今回のような「耕作地での検査」において、より大きな制限値を認めることで、農家の作物が「ホット(THC制限値を超えてしまう事)」になったりするリスクを取り除くことはできるが、最終製品や栄養補助食品のTHCレベルの具体的なガイダンスという根本的な問題を解決することはできない、といいます。
欧州連合の産業関係者は現在、EIHAのイニシアチブの下で、THCの「耕作地での」制限値を0.2%から0.3%へと増加させるためにロビー活動を行っています。
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EU政府の保守的な性質を考慮すると、1999年にTHC制限値が0.2%に削減される前まで有効であった、元の制限値0.3%に戻すという、現在EIHAが行っている戦略は慎重なものであるとKramarz氏は言います。
「我々は、EIHAの提案以上のものを望んでいる国がある事を歓迎しますが、より保守的な国の事も考慮に入れなければなりません。EIHAにとっては、EU当局からの0.3%の譲歩を達成することの方が、より現実的なのです。」
THC1.0%のメリット
THCが高いヘンプは、一般的にCBDの含有量も高くなります。そのため、THC基準値を1.0%に設定している国は、基準値が低い国よりも市場で優位に立っています。なぜなら、抽出技術や加工技術の進歩によって、THCの除去などは容易となっているため、他国では厳しいTHC制限値のために栽培できないこうした品種を栽培する事で、より効率的にCBDを生産する事が可能だからです。
世界のヘンプ生産国の中で、ウルグアイ、スイス、南アフリカ、マラウイ、タイなどは、ヘンプのTHCレベルを1.0%に設定しており、オーストラリアの一部の州もこの基準を適用しています。EU加盟国であるイタリアは、THCを0.6%に制限しています。
EIHAは、THC 0.3%の規制値を取り戻すための キャンペーンを展開していますが、これは時計の針を1990年代に戻すという試みです。
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1999年以前には、欧州はこの基準で運用していましたが、EU当局者は事実と科学を無視し、フランスの強力なヘンプ利権者の影響を受けて0.2%に制限を下げたという経緯があります。
なぜなら、こうしたフランス企業は早い段階でTHC含有量の低い品種を開発しており、低い制限値でも問題なく栽培が可能である一方で、地元農家などにとってはTHC制限値が低いほど、それに適合した作物を生産することが技術的に難しいからです。
つまり低いTHC制限値は、実質的に中小規模農家の駆逐や、新規参入業者への障壁として機能しており、低THC品種を開発している企業による市場の独占のためのツールとなっているのです。
ポーランドの品種を解放する
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ポーランド政府のプランでは、THC規制を1.0%まで引き上げることで、CBD分野でのポーランドの地位を強化する一方で、繊維分野、特にかつてはヨーロッパでの中心的地位を占めていたヘンプ・テキスタイル分野での同国の潜在力を強調しています。
同省は、現在のEUによるTHC規制は、ポーランドのヘンプ栽培を阻害していると指摘しています。
現行のルールの下では、THCが0.2%を超えた場合には、作物を廃棄しければなりません。
助成金
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新案では、ポーランドでのヘンプ栽培はTHC1.0%の制限値を満たす品種のみが正式に登録され、また、欧州では現行の「栽培地でのTHC含有量0.2%未満」のガイドラインを満たしたヘンプのみが、EUの農業助成金の対象となります。
同省の計画では、農家から加工業者までのバリューチェーンを合理化し、繊維用大麻の定義を明確にするとともに、ヘンプの栽培や取引の監視に関わる行政の負担を軽減することを目指しています。
政府のヘンプ推進の一環として農務省は、保健省に対しヘンプの栽培と生産に悪影響を与える2005年の薬物依存対策法の規定を調整するよう要請しています。
新たなヘンプ・プログラム
現地レポートによると、ポーランドのヘンプ作付け面積は、2018年の約1,300ヘクタール(3,212エーカー)から、昨年は3,000ヘクタール(7,412エーカー)まで増加したと推定されいて、ポーランドのヘンプ生産は過去5年間で4倍程度に増加しています。
一方、ポーランド産ヘンプによる利益を促進するために、政府の天然繊維・薬用植物研究所(IWNiRZ)を通じて「ポーランドのためのヘンプ・プログラム」が展開されています。IWNiRZは、農家に種子を販売し、その作物を購入する契約を結んでおり、ポーランド産の植物種子の輸出も行っています。
今年創立90周年を迎える同研究所は、世界で最も有名な天然繊維研究センターの一つで、2010年代半ばから商業ヘンプ市場への参入を開始し、CBD用のヘンプを栽培し、建築用やその他の用途の繊維を販売しています。
一方、日本ではTHCの制限値の設定すら行われておらず、政府はヘンプ産業を「無いモノ」として扱っており、世界各国が注目している成長産業を無視し続けています。 こうした潮流に警鐘を鳴らし、北海道ヘンプ協会などは、目標耕地面積20,000haを掲げてヘンプの本格的な産業化にむけて自治体と連携しながら努力を続けています。
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