イタリアの職人サンドロ・ティベリ氏は、3年前に麻製紙におけるヘンプの可能性を見出して以来、半透明の上質羊皮紙のようなものから、繊維質を残したものや、質感のある壁紙やその他装飾用途に適した素材まで、品質の高い様々な製品を開発してきました。
さらに重要なことに、古くから製紙の町として知られるイタリア中部のファブリアーノ周辺在住のティベリ氏は、ヘンプ紙の未来には期待ができると見込んでいます。
伝統を守る
「伝統を守ることは重要だ」と、13世紀から紙づくりを行っているファブリアーノ社の工場で15年間製紙を学んだティベリ氏は話します。「ただし、その伝統を将来に向けて発展させることが最も大切だ」
ティベリ氏は近い将来、ファブリアーノ社のパルプ用にイタリアの地元で栽培されたヘンプ繊維をより簡単に入手できるようになると想定しています。ティベリ氏はスペインから少量の原材料を輸入する手間と費用に苦労していましたが、最近、協力的な提供元となってくれるサウスヘンプ社に出会いました。サウスヘンプ社は南イタリア繊維加工工場があり、ティベリ氏のが拡大中のワ工房に必要とするヘンプ繊維を小ロットでも販売するつもりでした。
紙への “ヘンパシー”*ヘンプと共感(シンパシー)の造語
原材料が近くにあることで、ティベリ氏の「ヘンパシー」ブランドの紙製品やハンドメイドの制作物をあらゆる人に広げることが可能になります。その対象には画家からグラフィックデザイナー、高品質なコーポレートコミュニケーション資料を作成するマーケティング担当者に至るまで様々な人が含まれます。
ティベリ氏は、ヘンプのエコ・メリットを次のように打ち明けています。「私が作るような製品が持つ、生態学的な持続可能性の側面は、ますます注目を集めています。ヘンプは木材に比べてリグニンの割合が低いので、木材を溶かしてパルプにするために必要な大量の酸が、ヘンプには不要です。そして、ヘンプの茎の繊維と内核はすでに白いため、木材パルプで白さを増すために使われる有害な化合物も必要ありません。」
そして、おそらく最も重要なことに、4ヘクタールの森林が何十年もかかり生産するセルロースと同じ量を、ヘンプは1回の栽培シーズンで生産する事ができる、とティベリ氏は指摘しています。
専門市場における需要
ハンドメイドの専門市場では、パーソナライズされた透かしや浮彫の入った限定生産の紙の需要が高まるとティベリ氏は見ています。「私はただの紙を生産しているのでなく、希望に応じたあなただけのための紙を制作するのです。そこには錬金術があります。」
しかし同時に、彼は現在3人で運営している工房の規模から増産してより大きな取引ができるよう取り組んでいます。ティベリ氏は、最終的に現代のインクジェットプリンタやレーザープリンタに使えるヘンプ紙から、彼が自分の手で作る非常にカスタマイズされた芸術的な作品に至るまでの製品ラインを拡充させる計画です。
芸術家として、公式「マスター」製紙職人として、ティベリ氏はまた、認定校でのワークショップでヘンプ紙についての伝道活動も行っています。ティベリ氏は講義において「紙というのは素材と精神性とを併せ持つ存在であり、私たちは紙を作っているというだけではなく、夢の物質を作っているのだ」と語っています。
(HEMPTODAY 2017年12月17日)