- 見込まれている将来的な市場規模に対して、まだ未成熟なヘンプ産業において、その収穫機械や抽出技術は現状は小規模であり、DIYエンジニア達の自己犠牲によってゆっくりと成長している。
- 洗練された高度な技術が確立されていない今、この分野はリターンの見込める投資対象である。
あらゆる巨額のヘンプ・マネーがCBDを追いかけている状況では、単離抽出システムの市場が急激に伸びていることも、不思議ではありません。拡大中のヘンプのバリューチェーンにおいて格好のポジションにある、米国コロラド州ルイビルのIES社は、カンナビジオール(CBD)の需要増が、同社の今後の成長の大部分を占めると予測しています。同社はすでに、米国の45州に100箇所以上の抽出設備を持ち、CO2ベースの抽出技術(超臨界二酸化炭素抽出法)によって、ヘンプやそのほか他の原料から化合物を抽出できると、CEOのKelly Knutsonは述べています。
IES社は、エタノールやブタン、及びスチームよりも速く効率的であるだけでなく、テルペン、オイル、ワックスを途中で自動的に分離できる新しいCO2マシンの設計と構築を、現在進めています。
この高度に洗練された技術への投資に代表される投資資金は高額です。抽出システムの価格は、小さい場合は数十万ユーロから、大規模の場合は数百万ユーロにまで及びます。Knutson氏は、ホームである米国内の市場以外にも、オーストラリアからヨーロッパ、カナダ、中南米まで需要があると考えています。また、このような抽出技術のサブセクターはCBDのバリューチェーンの中で、特に利益の見込める分野ではありますが、同時に、この産業のその他の全ての分野に対して巨額の資金が投資機会を伺っています。それらはすべて、いいニュースだと言えるでしょう。
生産現場、そして作業場で
しかし、こうした最新鋭の抽出技術だけでなく、ヘンプから全ての利益を回収する事ができる安価な収穫機も必要とされており、必然的に地面に近く、現在、この夢のマシーンに対する投資の大部分が血と汗、そして涙となっているのが現状です。世界各地では、独立した起業家、エンジニアやその他の者イノベーター達が、こういった小規模で特殊なヘンプマシンを開発しており、通常は、それに必要な現金もまた、彼らが自ら提供しています。
ドイツ人エンジニア、Heinrich Wieker氏は、小さな工場や納屋、そして畑でも運用可能な、移動式収穫機と電動式のヘンプの蕾の収穫する機械を開発するために、ヘンプ畑および作業場で3年間働いています。これらのマシーンは、小型トラックやジープで牽引するトレーラーに載せて移動する事が出来るサイズです。
「手摘み収穫」はマーケティングのスローガンとしては聞こえはが良いかもしれませんが、ヘンプ原料の供給量が拡大するにつれて、人々を畑に集めて作物を収集することは、経済的に実現が難しくなっています。ドイツのバーグドルフにあるWieker氏の会社、Henry’s Harvester社によって開発された収穫機は、植物の茎から、選別された頂部の花全体を摘出するように設計されています。このシステムでは、チェーンおよびローラーシステムを通って収穫物は移動し、一方に茎が集められ、もう一方の側には花が集まります。
*編集局注:ヘンプは、その蕾、茎、葉、根など、それぞれの部位に個別の収穫物としての利用価値がある「マルチクロップ」と呼ばれており、捨てる部分がない。その為、上記のような二つ以上の部位を同時に収穫できるマシーンが求められている。
現金払い
被雇用者として休みなく働くWieker氏は、彼が開発した収穫機に投資するために、彼個人の資産を投下しただけでなく、銀行から借り入れまでしました。彼の目標は、小規模農家に対して、生産効率の上昇、畑の拡大、労働コストを削減し、高品質の蕾の生産を容易にすることなのです。
ラトビアの小さな町、Dzuksteの板金工であるKristaps Eglitis氏は、2000年代初めにオーストラリアに住んでいた95歳のCirulis氏によって始められた別の小さなドリーム・マシンの計画を受け継ぎ、現在Voldemars Cirulis氏と共に開発しています。このドリーム・マシンは、Eglitis氏のような、少ないながらも世界各地で増えているヘンプクリート建築の愛好家にとって、このヘンプの時代になってようやく日の目を見た機械のひとつなのです。
小規模機械の価値
これらの小規模なマシンは、現在のヘンプ産業の状況に、2つの重要な意味で適合しています。第一に、彼らは小規模農業企業の復活を誘導するのに役立つ可能性があります。地域で供給と需要をバランスよく保ちながら、生産者と消費者が食料生産に関するリスクを共有するというコミュニティ支援農業(CSA)イニシアチブは、ヨーロッパで数年間機能してきました。
関係者たちは、サプライチェーンを食糧源の近くに保つことを目的とした、この戦略にヘンプは最適だと考えています。彼らは、ヘンプはコミュニティのための食糧だけでなく、衣類、健康の補助、効率的な住宅、さらには燃料にもなる可能性もあると指摘します。それは、農業再生の中心にヘンプを置いた、より持続可能な生活様式を示すビジョンなのです。
カナダ、アメリカ、中国、インド、オーストラリアなどの巨大農業国で、より産業的な規模の農場が生まれる近い将来までは、しばらくの間、中・小規模向けで手頃な価格の、移動可能な機械が必要です。業界は緩やかに、しかし着実に成長してはいるものの、ヘンプの農地は一般的に小さく、とりわけ米国では、残念なことに連邦政府および州政府がヘンプの栽培に制限を課しています。
大型農業機械の登場
農業分野のもう一端では、ヨーロッパ産ヘンプの老舗、ベルリンを本拠とするHANF FARM社のRafael Dulon氏が、過去3年間にわたって、柔軟性に富んだ産業規模のヘンプ収穫機であるマルチコンバインHC3400プラットフォームにイノベーションを起こし続けています。このシステムは、年間に作物を何度も刈り取ることができ、時10-12キロメートルのスピードで様々な長さの麻を刈り取りながら、茎、種子、花の種類別に選別することができるのです 。
*編集局注:ヘンプは、その最も利用価値の高い蕾が先端に付くが、それを刈り取った後も成長を続け、下部に付いた蕾が日光を受けるようになると、先端と同じように大きな蕾を付ける。その為、HC4300のように複数回収穫できるシステムを導入すれば、収穫量は倍増する。
「もちろん、財政的には、長期的な投資です。しかし、この収穫機を完璧な物に仕上げることは、情熱によって突き動かされる仕事であり、この業界における、我々の自信の表明なのです。」と、ヨーロッパのヘンプ業界で20年もの間、ヘンプ食品および抽出用の花や葉の生産経験を積んだベテランであるDulon氏は、MC HC 3400について語ります。
また、米国の状況が比較的制限されているにもかかわらず、コロラド州のパワーゾーン社は、投資収益率を最大限に引き出そうとする農家に対して重要なセールスポイントである、既存の農業機械と一緒に使用可能な大型収穫機および付属のプロセッサーを提供しています。 CBDオイルにとって最適な花と、茎を収集するために設計されたプラットフォーム(前出同様、自己資金)は、毎時12エーカーの速度で畑の中を進むことができ、地面から6〜15フィートの範囲でカットの長さを設定できるオプションがあります。パワーゾーン社のファイバートラック収穫機は、建築材料となるヘンプの茎を、1時間に最大10トン処理することができます。
DIY発明家に感謝
昨今のヘンプ業界における全てのことと同様に、技術的進歩は投資を呼び込みます。CBDセクターの急進は喜ばしいことであり、初期投資のリスクはあるものの、物事を動かす上で必要とされる投資家達にとって、ヘンプ業界への魅力的な入り口でもあります。しかしバリューチェーンについて語るならば、それは、完璧なヘンプの収穫・加工機械を追求しながら、草の根レベルで自分の時間や資金を使って業界に貢献しているDIY発明家や、エンジニアなどの夢を追う人々のおかげなのです。彼らは重要なメッセージを発信しています。それはヘンプが持つすべての可能性を収穫するには、バリューチェーンの上流そして下流の双方に、技術および機械への投資が必要だということです。
(HEMP TODAY 2018年6月6日)
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