
小規模なヘンプ栽培が可能に
ニュージーランドで、一般市民が小規模かつ非商業目的でヘンプを栽培できる環境が整い始めています。
規制緩和を受け、ニュージーランド・ヘンプ産業協会(NZHIA)は、一般の人々にもヘンプ種子を提供する「Seed Project」を立ち上げました。
このプロジェクトでは、非商業目的で栽培を行う人にヘンプの種子を提供するとともに、初めて栽培する人が適切に育てられるよう、栽培に関する情報も提供します。
対象となるのは、ヘンプに関する教育や研究に関心を持つ人々のほか、将来的に農業としてのヘンプ栽培を検討している人たちです。
これまで産業関係者や研究機関が中心だったヘンプ栽培を、より身近なものにしようという取り組みです。
ハンガリーの繊維用品種
今回のプロジェクトで提供されるのは、「Kompolti(コンポルティ)」と呼ばれる伝統的なハンガリー産の繊維用品種です。
Kompoltiは、茎の収量が高く、特に繊維含有率が高いことで知られています。
一般的な繊維含有率は約30〜35%とされ、繊維利用を目的としたヘンプ品種として長く利用されてきました。
この品種は、すでにニュージーランド国内でも栽培試験が行われています。
これまでの試験では、安定した茎の生産が確認されており、南半球の栽培環境にも適応できることが示されています。
マッセー大学やリンカーン大学では、植え付け密度、窒素肥料の必要量、播種時期、バイオマス生産量、茎の収量などについて研究が行われてきました。
つまり今回提供されるのは、単に海外から持ち込まれた品種ではなく、ニュージーランドの環境でも一定の栽培実績を持つヘンプ品種ということになります。
20年続いた制度を廃止
今回のSeed Projectの背景にあるのが、ニュージーランド政府による大幅な規制改革です。
5月28日、ニュージーランドは2006年から続いてきた「Misuse of Drugs (Industrial Hemp) Regulations 2006」を廃止しました。
この制度では、ヘンプを栽培するためにライセンスを取得する必要があり、約20年間にわたって国内のヘンプ産業を管理してきました。
しかし新しい制度では、一定の条件を満たすヘンプについて、許可された目的で栽培、保有、加工、調達、販売、供給する際にライセンスが不要となりました。
これはニュージーランドのヘンプ産業にとって非常に大きな変更です。
これまで「ライセンスを取らなければ栽培できない作物」だったヘンプが、条件を満たせば、より一般的な農作物に近い形で扱われるようになります。
THC基準も1%へ
ヘンプの定義そのものも変更されました。
これまでニュージーランドでは、THC濃度0.35%以下のCannabis sativaが産業用ヘンプとして扱われていました。
新制度では、この上限が乾燥重量で1.0%以下まで引き上げられました。
さらに政府が管理していた「承認済みヘンプ品種リスト」も廃止されました。
今後は特定の品種名がリストに載っているかどうかではなく、実際のTHC濃度が1.0%以下であるかどうかが基準になります。
つまり、基準値を満たすCannabis sativaであれば、品種を問わずヘンプとして扱うことができるようになりました。
これは生産者にとって、栽培品種を選択する自由度が大きく広がることを意味します。
業界が求めてきた規制緩和
ニュージーランドのヘンプ業界では以前から、従来の規制制度について「コストが高く、実験や新規事業への参入を妨げている」との声が上がっていました。
特に、新しい品種を試したり、小規模に栽培を始めたりする場合でもライセンス制度の対象となることが、産業の成長を妨げる要因の一つと考えられてきました。
今回の改革によって、その大きな障壁の一つが取り除かれたことになります。
NZHIAのSeed Projectも、この規制緩和を活用し、一般の人々が実際にヘンプを育てる機会を増やそうとするものです。
ヘンプを「見る産業」から「育てて理解する作物」へ近づける取り組みともいえます。
すべてが自由になったわけではない
一方で、今回の規制改革は、ヘンプ植物のあらゆる利用を自由化したものではありません。
茎や種子については、繊維製品や食品など、従来の産業用途で利用できます。
しかし、ヘンプの花や葉から成分を抽出する行為については、依然として規制されています。
CBDなどのカンナビノイド製品についても、ニュージーランドでは厳しく管理されている医療用大麻制度の対象です。
つまり今回の改革の中心は、ヘンプそのものの栽培や繊維・種子利用をしやすくすることであり、CBD市場まで全面的に自由化したわけではありません。
それでも、ライセンス制度の廃止、THC基準の1%への引き上げ、承認品種リストの撤廃という一連の変更は、ニュージーランドのヘンプ政策として大きな転換点です。
さらに今回、業界団体が一般市民向けに種子を提供し始めたことで、その規制改革が実際の栽培現場へ広がり始めました。
今後、こうした小規模な栽培や研究が、新しい農家や事業者を生み出す入口となるのか注目されます。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1.ニュージーランドで一般市民もヘンプ栽培へ
規制改革により、一定の条件を満たすヘンプであれば、従来必要だった栽培ライセンスなしで育てられるようになりました。NZHIAも一般の非商業栽培者向けに種子の提供を始め、ヘンプがより身近な作物になりつつあります。
2.THC基準は0.35%から1%へ
産業用ヘンプとして認められるTHC濃度の上限が、従来の0.35%から1.0%へ引き上げられました。さらに承認品種リストも廃止され、今後は品種名ではなく、実際のTHC濃度によってヘンプかどうかが判断されます。
3.「小さく試す」ハードルが大幅に低下
これまでのライセンス制度は、費用や手続きの負担によって、新しい品種の試験や小規模な栽培を難しくしていました。今回の規制緩和により、研究や教育、将来的な農業参入を目的とした試験栽培が行いやすくなります。
4.CBDまで自由化されたわけではない
規制が大きく緩和された一方、自由になったのは主にヘンプの栽培や茎、種子の産業利用です。花や葉からの抽出、CBDなどのカンナビノイド製品については、引き続き厳格な医療用大麻制度の管理下にあります。


