
繊維系ヘンプ品種に挑む
EUで新たに承認されたヘンプ品種が、将来的にヨーロッパの主要な繊維用ヘンプ品種に挑む可能性を示している。
オランダとイタリアを拠点とする遺伝子開発企業Enectaが開発した新しい品種「Carmanecta」は、EUの植物品種承認プロセスの一環として実施された試験において、いくつかの主要な欧州品種を上回る草丈と収量を示した。
Carmanectaは今週、オランダの国家品種カタログへの登録が承認された。これによりEUレベルでの登録手続きが進み、EU域内全体で栽培用種子として販売できる道が開かれた。
Enecta創業者のJacopo Paolini氏は、Carmanectaの種子は約2年後、2028年の栽培シーズンから供給可能になる見通しだと述べている。
印象的な試験結果
試験では、Carmanectaの乾燥バイオマス収量は1ヘクタールあたり約16.9トンと推定され、比較対象となったフランスの主要3品種とウクライナの1品種をわずかに上回った。
また、この新しい品種は、長年イタリアを代表する繊維用ヘンプとして知られてきたCarmagnolaなどの歴史的品種よりも高いパフォーマンスを示す可能性がある。
商業的な意味
これらの性能指標は、オランダで実施されたVCU試験(Value for Cultivation and Use:栽培・利用価値試験)に基づくものだ。VCU試験はEUの公式制度の一部で、新しいヘンプ品種を評価する際に用いられる。一般的に、この試験を通過することが、国家品種リストやEUの植物品種カタログに登録されるための条件となる。
オランダでは、この登録とVCU試験の監督は「オランダ植物品種委員会(Raad voor Plantenrassen)」が担当している。
繊維加工業者や農家にとって、EUカタログへの登録は非常に重要だ。なぜなら、どの遺伝子品種が商業的に大規模栽培され、国境を越えて流通できるかを決定するからであり、これはヨーロッパで拡大しつつあるヘンプ繊維産業の原材料基盤を形作る要素となる。
前進への一歩

Carmanectaの承認は、Enectaにとって厳しい状況の後に訪れた重要な出来事でもある。2025年、イタリア政府は同社のCBD電子商取引サイトを予告なしに閉鎖し、企業に大きな打撃を与えた。
Paolini氏は、この新しい品種の承認について「ここ1年に起きた出来事を考えれば、私たちにとって非常に重要な節目だ」と語った。
「サイト閉鎖とそれによる経済的損失から、私たちはまだ回復の途中にあり、その影響もまだ感じている。それでも、一歩ずつ前進していくつもりだ」と同氏は述べている。
なお、ヘンプの収量は土壌条件、降雨量、気温、日照時間などの地域要因によって大きく変動する。北欧と南欧では栽培条件が大きく異なるため、収量の評価にはこうした環境差も考慮する必要がある。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1. 新品種Carmanectaが欧州の主力繊維品種に挑む可能性
オランダとイタリアの企業Enectaが開発したCarmanectaは、試験において既存の欧州主要品種より高い草丈と収量を示した。将来的に欧州の繊維ヘンプ市場で既存品種の競争相手になる可能性がある。
2. EUカタログ登録が市場参入の鍵
EUでは品種が国家リストやEU植物カタログに登録されなければ、域内での商業栽培や種子販売ができない。今回のオランダ登録により、CarmanectaはEU全域での商業展開に向けた重要なステップを踏んだ。
3. VCU試験が新品種の実力を評価する制度
VCU(栽培・利用価値試験)は、新しい品種が農業・産業用途として実際に価値を持つかを評価するEUの公式プロセスである。収量、草丈、栽培特性などが比較試験で検証される。
4. CBD事業の打撃からの再出発
Enectaは2025年、イタリア政府によるCBD通販サイトの閉鎖で大きな経済的ダメージを受けた。Carmanectaの承認は、その回復過程の中で生まれた新たな成長機会となっている。


