パナマ国会、長年の議論を経てヘンプ法案を可決
パナマの国会は、2020年末に初めて導入されたヘンプ法案を4年以上の審議の末に可決し、作物の生産、マーケティング、輸出に関する規制を整備することになりました。
無所属議員カルロス・サルダーニャが推進し、他の政党からも支持を受けたこの法案では、播種、栽培、収穫、加工、保管、輸出、輸送、マーケティングに関する規制が設けられます。また、ヘンプの種子の所持および使用にも規制が適用されます。
サルダーニャ氏によると、この法案は政府のさまざまな機関と技術委員会を通じて共同で策定されたものであり、パナマの社会保障基金(CSS)が直面する危機からの回復を支援することが期待されています。この法案によって雇用が創出され、農家には収入増加の機会が提供されると述べています。
補足:社会保障基金(CSS)の危機
パナマの社会保障基金は、高い非正規雇用率、手厚い年金給付、そして経済の低迷による拠出金の減少が重なり、深刻な財政危機に直面しています。労働力の45%以上が「非正規雇用」に分類されているため、収入が増加せず、支出が増え続けることで基金の持続可能性が脅かされていると経済学者らは指摘しています。
補助金なしで雇用創出を目指すヘンプ法案
サルダーニャ氏は、このヘンプ法案が持続可能な雇用の機会を提供し、政府が公務員の雇用を増やしたり、生産者に補助金を提供したりする必要がないと述べました。
この法案は現在、大統領のホセ・ラウル・ムリーノ氏に送られ、承認または拒否されることになります。大統領はこれまで、カンナビスに関する具体的な見解をあまり示していません。
パナマにおける医療用カンナビスの合法化と現状
パナマでは医療用カンナビスが合法化され、治療、医療、獣医、科学研究、およびその他の研究目的での使用が認められていますが、娯楽目的での使用は依然として違法です。
2020年に初めてヘンプ法案が提案された後、2021年に医療用カンナビスが合法化され、政府は医療用マリファナ製品の輸入、流通、販売の枠組みを確立しました。2022年8月に最終化された規則では、医療グレードのCBDの取り扱いについて明確な許可や禁止が明記されておらず、その法的地位は規制当局の解釈に委ねられています。なお、店頭でのCBD製品の販売は違法とされています。
農業生産の制限
パナマはサービス産業中心の経済ですが、農業は食料安全保障と地方の生計にとって依然として重要な役割を果たしています。しかし、土地の細分化、旧式の農業技術、気候変動への脆弱性といった課題が、生産性の向上を妨げています。政府はインフラや灌漑設備への投資、持続可能な農業イニシアチブを通じてこの分野の近代化を図っていますが、小規模農家は依然として信用供与や市場へのアクセスに障壁を抱えています。
パナマには約58万2,000ヘクタール(約140万エーカー)の農地があり、主要な作物にはバナナ、カカオ、豆類、コーヒー、トウモロコシ、ジャガイモ、米、大豆、サトウキビなどが含まれます。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1. ヘンプ法案がもたらす経済効果と雇用創出
社会保障基金の財政危機に直面しているパナマにとって、政府の財政負担を増やすことなく雇用を創出するモデルは重要であり、この法案がその鍵を握るでしょう。
2. 農業の制約とヘンプ産業による新たなチャンス
持続可能な農業モデルとしてのヘンプは、単なる作物以上に農村部の社会構造を変える可能性があります。
3. 医療用と産業用の違いを重視した規制
明確な規制が農家にとってリスクを軽減し、長期的な成長に結びつくと考えられます。国際市場へのアクセスが拡大すれば、輸出主導型経済の拡張も現実味を帯びるでしょう。
4. 政治的な不確実性と政策の一貫性
今後の政策の一貫性が、農家や投資家に対する信頼感を高め、パナマがヘンプ産業の成長において先行者優位を得るための鍵となるでしょう。