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ヘンプ産業の停滞を打破する鍵、次期農業法案がもたらす未来とは

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優先課題の分裂と低迷する市場

米国の次期農業法(U.S. Farm Bill)において、ヘンプ関連規制の議論が進められる中、産業の低迷が立法上の課題として浮き彫りになっています。これは、米議会調査局(CRS)の最近の報告書によるものです。

この報告書は、政策の複雑な背景に存在する主要な問題を強調しています。その中でも特に議論を呼んでいるのが、デルタ-8 THCなどの酩酊作用を持つ合成カンナビノイド製品を巡る激しい意見の対立です。

この製品群は、州および連邦レベルで論争を引き起こしており、一部では公衆の安全を守るため全面禁止を主張する意見がある一方、他方では製品を合法とし続けるための明確な連邦規制を求める声も挙がっています。

異なる政策目標

「次期農業法に関するヘンプ業界の優先事項は、全国および地域ごとの団体間で政策目標や優先順位が異なり、政策立案を複雑化させています」と、まだ最終決定されていない2023年農業法に関するCRS報告書は述べています。

酩酊作用を持つ合成カンナビノイド製品に関する論争以外にも、政策立案者が対処すべき重要な規制上の課題には、試験要件、ライセンスプロセス、麻薬取締局(DEA)の役割が含まれています。

2018年農業法で確立された現在の枠組みの下で、産業用ヘンプ栽培者は、テトラヒドロカンナビノール(THC)レベルの試験や身元調査など、厳格な要件を課されています。過去の議会で提案された改正案では、これらの規則の一部を緩和することが目指されていました。

縮小する産業

立法および規制上の課題に加え、ヘンプ業界は深刻な経済的後退にも直面しています。米国農務省(USDA)によると、米国のヘンプ生産における農場レベルの価値は、2021年の8億2400万ドルから2023年には2億9100万ドルに減少しました。この縮小は、耕作面積の減少や、特にCBDに使用されるヘンプフラワーの市場価格低下を反映しています。CBDは依然としてヘンプ業界で最大のサブセクターです。

CRS報告書では、この減少の一因を、規制の不確実性と作物の合法化後の市場飽和にあると指摘しています。農家にとって、連邦THC制限(0.3%)を超える「ホット」ヘンプ(非準拠ヘンプ)を栽培するリスクは依然として大きな課題です。報告書によれば、近年、収穫作物の約20%が法的なTHC基準を超えているとされています。

これまでの取り組みでは、THC制限を1.0%まで引き上げる提案がなされてきました。この引き上げは、基準を超えた作物のリスクを軽減するだけでなく、CBD生産をより効率的にする可能性があります。なぜなら、CBDはヘンプ植物内でTHCに比例して増加するためです。

支援を求める声

CRSは、ヘンプ業界の関係者が連邦議会に対し、米国農務省(USDA)の農業プログラムを通じた支援拡大を求めていると指摘しています。主要な提案には以下が含まれます:
ヘンプの遺伝子研究や土壌炭素隔離研究への資金拡大:ヘンプが持つファイトリメディエーション(植物による環境浄化)への可能性も調査対象としています。
ヘンプ繊維の加工能力の拡大:バイオベース製品の推進が産業成長の鍵と考えられています。
USDAの特産作物プログラムへのヘンプの追加:これにより助成金や追加支援を得られる可能性が広がります。
ヘンプ農家向けの作物保険、融資、銀行サービスへのアクセス改善:これにより農家が抱える金融上の課題を軽減することが期待されています。

製品の安全性とFDA

CRSレポートでは、CBDを含むヘンプ由来の消費者製品に関する未解決の課題が強調されています。食品医薬品局(FDA)は、CBDに関する規制枠組みをまだ確立していないものの、市場に出回る製品は、栄養補助食品として合法的に販売するには十分な安全性がないと警告しています。同機関は、現行法の下ではCBDを規制することができず、CBDを管理するための新しい仕組みを議会に求めています。

 

議会では、FDAにヘンプ由来製品の安全基準とラベル表示要件を策定するよう義務付ける立法提案が検討されています。しかし、農業委員会と健康機関間の管轄権の重複が進展を妨げており、多くの製品が規制のグレーゾーンに置かれているとCRSレポートは指摘しています。

 

次回の農業法案におけるヘンプへの注目は、農業革新、経済的持続可能性、公衆安全に関する広範な議論を反映しています。多用途な作物としてのヘンプの潜在能力は、アメリカ農業の未来における重要な役割を担う可能性を秘めています。しかし、明確で一貫した政策がなければ、業界は停滞するリスクがあるとCRSは述べています。

編集部あとがき

今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

 

1. 多様な政策目標と業界課題が立法プロセスを複雑化
ヘンプ業界の優先事項が地域や団体ごとに異なり、統一的な政策の策定が困難であるとされています。特に、ヘンプ由来の「酩酊性物質」に関する規制が重要な論点となっており、これにより立法プロセスがさらに複雑化しています。

 

2. 産業の縮小と経済的挑戦
アメリカ国内のヘンプ生産価値が2021年から2023年にかけて急激に減少しており、市場飽和や規制の不透明さが主な原因とされています。このような経済的課題は、業界全体の存続に影響を及ぼしています。

 

3. FDAの未解決課題と消費者製品の安全性
FDAがCBDを含む製品の規制を明確にしておらず、これにより多くの製品が規制のグレーゾーンにとどまっています。議会での対応が遅れる中、消費者の安全性や業界の信頼性への影響が懸念されています。

 

4. ヘンプ産業の将来性と持続可能性
ヘンプは多用途で持続可能な作物であり、農業分野での重要なプレイヤーになる可能性を秘めています。しかし、明確な政策がなければ、産業は停滞するリスクがあると警告されています。特に、栽培から加工、販売までの全体的なサポートが重要です。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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