米国のナショナル・フットボール・リーグ(NFL)は、疼痛管理とカンナビノイドに関する研究に100万ドルの助成金を支給すると発表しました。
リーグは、選手組合であるNFL選手会(NFLPA)と共同で運営する「疼痛管理委員会」での研究を実施するために、スポーツ医学における資格を持つ研究員を募集しています。
同委員会は、「カナビス成分やCBDがどれだけ安全で、どのくらい効果があるのか、特にオピオイドの代替となる可能性があるのか」を調査するとしています。
NFLによると、この研究は、NFL選手の疼痛管理と運動能力に関する同委員会で進行中の調査を補完するものだと言います。
より精密な分析の必要性
具体的には「NFLフットボール選手の外科手術後の疼痛管理に、補助的に用いられる薬物療法および非薬物療法の潜在的な治療効果」を疼痛管理委員会にて研究を行なう予定です。
NFLによると、年内に最大5件の助成金が支給される予定だといいます。
委員会の共同議長であるKevin Hill博士は、「選手たちがカナビス製薬を使って痛みを治療した際の効果には、かなり個人差がある」と述べ、「医療用大麻やCBDの使用は多くの人が思っているよりもリスクが伴うのではないか」と示唆しています。
痛みを和らげるために必要な量を摂取した場合、肝機能への影響や他の薬との予期しない相互作用が起こる可能性があるとHill氏は指摘します。
「より正確な情報と、より科学的なエビデンスが必要である」とHill氏は述べています。
厳密に安全性と有効性を確認する
ボストンにある医療機関 Beth Israel Deaconess Medical Center(BIDMC)の依存症精神医学の専門医であり、著書『Marijuana: The Unbiased Truth about the World’s Most Popular Weed(マリファナ:世界で最も人気のある植物についての偏見のない真実)』を執筆したHill氏は、次のように述べています。
「医療用大麻の使用に対する関心は非常に高く、それもあってエビデンスでの報告以上の効果が謳われていると感じる。そして一流アスリートがCBDを使って痛みを治療するという話であれば、第1は安全性について、第2は有効性について、より厳密な確認を行なわなければならない。しかし私達は、その段階にまだ至っていないと考えている」
NFLの疼痛管理委員会は、リーグと組合の団体交渉協定の一環として、2019年に結成されました。この委員会は、分析研究と啓発活動を通じて臨床的に最良の疼痛管理方法を奨励し、CBDや他のカンナビノイドに関するフォーラムなどを実施しています。
特定の企業との契約は不可
NFLは、昨年末に方針を更新し、選手がカナビス製品メーカーとの独占契約を結ぶことを抑制するため、各チームに「NFLの選手、コーチ、その他の従業員は、アルコール飲料、タバコ、カンナビノイド製品を推奨したり、広告に登場したりしてはならない」と通知しました。
また「選手がカンナビノイド製品を推奨している場合、それはNFL選手会で推奨しているものではない」とも述べました。
しかし現状のアメリカのスポーツ界全体では、アスリートは契約を通じてCBDと関わりを持つことも多く、選手の中にはCBDで起業したり、引退後、CBDの会社に入社したりする人もいるなど、アメリカのスポーツ業界ではCBDが広く愛用されているという現実があります。
現状に沿ったルール変更とCBDの可能性
NFLのカナビス製品に対する考え方は過去10年間で変化しており、昨年承認された団体協約では、カナビスの陽性反応が何度か出た場合は出場停止処分となっていた従来のルールが撤廃されました。
また新たな研究では、CBDは疼痛管理に加えて、慢性外傷性脳症(CTE)の治療にも応用できることが示唆されています。CTEとは、現役時代の頭部外傷が原因で、引退したNFL選手の中に増えつつある脳の変性疾患のことです。コンタクトスポーツの選手にとっては深刻な問題で、CBDがその治癒へのカギとなるかもしれません。
カンナビノイドの外科的治癒効果は、以前の記事でも紹介しましたが、様々な研究で報告がなされています。またトップアスリートからのフィードバックも大変貴重で、今後のCBDの新しい活用方法が発見されていくことに繋がります。
引用元;https://hemptoday.net/nfl-will-spend-1-million-to-study-cannabinoids-in-pain-management/