
THC基準0.3%と便宜的に決めた1976年学術書
大麻草は、最新のゲノム解析により、約4000年前に人為的に、THC濃度の高い薬用型とCBD濃度の高い繊維型に分けたことがわかってきている。
CBDが1963年、THCが1964年にイスラエルの科学者メシューラム博士によって同定されると、国連が全世界の大麻草のTHC/CBD濃度を調査した。その結果、0.4%以下を暫定的にIndustrial hemp と定義づけた。
1976年にアーネスト・スモール博士(カナダ農務省研究員)とアーサー・クロンキスト(ニューヨーク植物園)がA practical and natural taxonomy for Cannabisという論文の中で、低THC型と高THC型を区別するための「便宜的・実務的」な基準として提示した。
同時期に、欧州農業補助金システムとして、1970年代に亜麻(フラックス)及び大麻(ヘンプ)の項目で、ヘンプのTHC濃度を0.3%と定めた。1998年には、カナダが世界で産業用ヘンプの定義を0.3%未満とした。
これらの流れを受けて、様々な国でTHC濃度0.3%というのがヘンプ(低THC)の基準値となった。
世界の大麻政策の一覧表を見る
表1.は2026年3月時点での情報である。THC濃度に着目すると、最近2%まで拡張した南アフリカ、0.35%から1%に引きあげたニュージーランドを筆頭に、1%程度の基準値を採用する国が増えている。
下限は薬物政策に厳格なロシアで0.1%まである。
表1. 世界各国の産業用ヘンプの政策
注:〇は制度化済み、△は違法だが非犯罪化政策を採用している、×は違法

南アフリカは、世界で最も紫外線の強い地域であり、最初は欧州と同じTHC濃度0.2%を基準値としたが、在来種は1%を超えることが科学的に明らかとなっていた。そこで地元の在来種を栽培したい農家や研究者の提案により、2.0%以下を採用したのである。外国産の種子輸入に頼らず、自国の種子活用を優先した決断の結果である。
ニュージーランドは、2024年に「レッドテープ(煩雑な官僚的手続き)」を削減し、規制の質を向上させることを目的とした新しい中央省庁「規制省」を発足させた。日本語の意味としては、行政規制効率化省と呼ぶべきものである。この規制省の見直しテーマに、産業用ヘンプが対象となり、20年前に0.35%の規制を定めて運用してきたが、栽培面積も広がらず、市場も育っていない理由に、ヘンプ規制の厳しさがやり玉に挙がった。そこで、全面的に見直して、0.35%→1.0%、許可制→届出制などの大幅な規制緩和を実施したのである。
戦前までの日本は、大麻草栽培に関して農林省(現・農林水産省)が管轄し、THC濃度の基準値もなく、医療利用(インド大麻)も可であった。75年間の大麻取締法の原則栽培禁止の政策を終え、新しく大麻栽培法が2025年にスタートした。諸外国の事例と、国内の状況を踏まえて、新しい制度の運用改善に尽力していくことが求められている。
日本のTHC濃度は?(とちぎしろ・野生大麻・在来種)
1970年代に欧米のヒッピー・カルチャーの影響により、マリファナの喫煙文化が日本にも伝播してきた。
1972年に東北自動車道が開通したことにより、日本最大の大麻生産地である栃木県に、大麻盗難をするものが現れた。その対策として、栃木県農業試験所は、1983年に低THC品種「とちぎしろ」(いわゆる行政用語でいう無毒大麻)が育成され、1984年に一斉に在来種から「とちぎしろ」に切り替えられた。
そのため、年間20~30件あった大麻盗難事件はゼロとなり、今日まで約40年間に渡って、誰も盗難していない。

北海道には年間50万本程度の野生大麻が保健所等で焼却処分されている。これは、第二次世界大戦前に、明治の屯田兵が漁網や軍需品(ロープ等)の需要を賄うために栽培を奨励し、戦後にそのまま畑で放置されたものが、野生化したものである。THC濃度は、1970年代の道衛生研究所の調査によると、道内各地の野生大麻の雌株でCBD:0.04~0.49%、THC0.56~5.73%、CBN0.05~0.48%であったことが報告されている。
日本の在来種でTHC濃度が高いものはどうなるのか?
今回の大麻栽培法では、THC濃度が0.3%以下の品種であれば、「第一種大麻草採取栽培者」免許で栽培が継続できる。また、THC濃度が高いものは、医薬品原料として「第二種大麻草採取栽培者」免許で栽培が可能となった。三重県の天津菅麻プロジェクトで栽培している大麻草はここ数年の行政の収去検査でもTHC濃度が0.3%を超えていないことが確認されている。
しかし、日本の在来種で、繊維用だが、1~2%程度(南アフリカの在来種と同じ値)のものの運命はどうなるのか?今のところ、旧免許を継続できる「大麻草栽培者」免許で、2027年12月(2027年度)まで栽培ができる。その後は、何百年・何千年と続いてきた日本在来種が問答無用に廃棄又は永久凍結(農水省ジーンバンクの種子銀行保管)の対象となる。改正した大麻栽培法には、「大麻草研究栽培者」という大学等研究機関で栽培研究ができる免許が制度化されたので、その免許をもって継続するという道しかない。
一般的なマリファナのTHC濃度は、5~25%であり、THC 1.0%ではマリファナとプラセボ(偽薬)と区別つけられず、THC 2.7%ではプラセボと明確に区別できた(Franjo and Gero, 2002)との報告があり、
南アフリカの2%は、科学的にも妥当性をもっている。
世界の主要なヘンプ栽培国が安全マージンを見ての0.3%というと物分かりのよい解釈である。日本の大麻繊維の文化的保護を考えると、南アフリカの2.0%までの拡張は、前例主義しか採用しない日本においも検討すべき課題であろう。
本原稿は、CBDアドイベントカレンダーのキャンペーン(https://calendar.cbdbu.jp/ja/advent)の一環として発行しています。
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参考文献&リンク集
赤星栄志.世界における産業用大麻(ヘンプ)に対する規制制度について—人間科学研究 (18) 1-21 2021.
北海道ヘンプ協会「野生大麻と遺伝資源」https://www.hokkaido-hemp.net/wildhemp.html
天津菅麻プロジェクト https://amatsusugaso.jp/
2018年~25年に大麻合法化した国と地域 https://www.dreamnews.jp/press/0000338023/
厚生労働省 令和7年3月1日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行されます https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43079.html


