米国裁判所、ファームビル改正を控えて
米国控訴裁判所は、酩酊性合成カンナビノイド製品の販売を厳しく制限するバージニア州の法律を支持しました。この判決は、州規制に対するヘンプ業界の法的挑戦にとって重大な打撃となり、バージニア州の法律が連邦規則や憲法と矛盾しないことを確認しました。
第四巡回控訴裁判所は、上院法案903(S.B. 903)が連邦の優越原則や休眠商業条項に違反しているという主張を退け、健康と安全の問題を規制する州の権限を強調しました。
この決定は、ヘンプ由来物質に対するより厳しい管理への広範なシフトを補強し、州の自主性、連邦の監督、業界の要求との間で続く緊張を浮き彫りにしています。
より厳格な規則と罰則
2023年に可決された上院法案903(S.B. 903)は、嗜好用大麻の代替品として市場に流入した酩酊性合成カンナビノイド製品、特にグミや飲料に対応するために制定されました。これらの製品の多くはヘンプ由来のCBDを原料に合成されたもので、デルタ8 THC、デルタ10 THC、THC-O、HHCなどの精神作用化合物を含んでいます。2018年のファームビル法(Farm Bill)では、ヘンプをデルタ9 THCを0.3%未満含む大麻と定義しましたが、ヘンプの花から合成された「酩酊」物質の可能性を考慮していなかったため、このような製品が市場に溢れました。
バージニア州の改正法では、いかなる形のTHCも総量0.3%に制限され、パッケージあたりの最大含有量は2ミリグラムと規定されています。また、ラボでの検査、子供用安全パッケージング、ヘンプ製品を販売する事業者の登録が義務付けられています。これらの措置は、特に子供を含む消費者を精神作用物質から保護することを目的としています。2022年には、デルタ8 THC摂取による子供の死亡例が報告され、厳格な監視の必要性が強調されました。
バージニア州農業消費者サービス局(VDACS)はこれらの法律を厳格に執行しており、2024年だけで300以上の事業者に対し約1,100万ドル(約16億円)の罰金を科し、1万7,000件以上の違反を摘発しました。業界関係者からの反発があるにもかかわらず、州政府は強い姿勢を崩さず、2025年も検査と罰則の施行を続けています。
連邦レベルでの不確実性
バージニア州による酩酊性ヘンプ製品の取り締まりは、米国全体で進行中のより厳格な規制や全面禁止を導入する傾向を反映しています。一部の生産者や小売業者は、これらの措置がイノベーションを抑制し、小規模事業者を脅かすと主張していますが、規制当局は、未成年者を標的にした誤解を招くマーケティングや健康への悪影響に関する報告を挙げ、安全性への懸念を強調しています。
連邦レベルでの法的状況は依然として曖昧です。2018年のファームビル法は、結果的に精神作用を持つ酩酊性合成カンナビノイド製品の台頭を促してしまいましたが、この法律は現在見直しの段階にあります。上下両院の議員は、次回のファームビル法への修正案を提案しており、酩酊性物質を完全に除外する形でヘンプの定義を再構築する可能性があります。この修正案が可決されれば、統一された連邦基準が設定されるため、州ごとの規制争いは不要となります。
次回のファームビル法でこの対立が解消されるかどうかはまだ分かりませんが、これに関わる生産者、規制当局、そして消費者にとっては非常に重要な問題となっています。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1. 州と連邦レベルでの規制の変化と矛盾
バージニア州の厳格な規制は、酩酊性合成カンナビノイド製品への懸念が広がる中、州が独自の健康と安全を守る権限を持つことを再確認しました。これに対し、2018年のファームビル法は現在の混乱を招いた一因であり、次回の改正で全国統一基準が導入される可能性があります。
2. 安全性と消費者保護の重要性
子どもを含む消費者の安全を確保するため、バージニア州は厳しいテスト基準やパッケージング規制を導入しました。特に2022年の子どもの死亡事故は、これらの措置を推進する決定的な要因となりました。
3. 業界への影響と抵抗
規制が中小企業や生産者に深刻な影響を与えているとの批判もありますが、規制当局は消費者保護を優先しています。この状況下で、業界は安全性と革新性を両立させる新たな戦略を求められています。
4. ファームビル法改正の重要性
次回のファームビル法改正は、酩酊性合成カンナビノイド製品の明確な規制を盛り込むことで、現行の州ごとの対立を終結させる可能性があります。これにより、業界全体に統一された枠組みが提供されることが期待されています。