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なぜ、日本の医療従事者は、国際標準の大麻/カンナビノイド医学を学ぶ必要があるのか?(後編)

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前編から続く

関連記事:

なぜ、日本の医療従事者は、国際標準の大麻/カンナビノイド医学を学ぶ必要があるのか?(前編)

MM411https://medicalmarijuana411.com/)は、2009年から米国の医療従事者向けの生涯教育として、カンナビノイド医学教育プログラムを提供してきた実績があります。

 

MM411は、アメリカ医師会(AMA)認定の生涯学習教育(CME)コースをベースに、日本臨床カンナビノイド学会とのパートナーシップによって、日本語版にローカライズした講座を2010月に開講しました。

 

ここでは、特に我が国の国家資格を有する医療従事者(医師、歯科医、獣医、薬剤師、看護師など)が「カンナビノイド医学」を新規に学ぶ必要性について概説します。

 

用語注釈:

カンナビノイド:大麻草に含まれる100種類以上の特異的な生理活性物質の総称のこと。

カンナビノイド医学:医療用大麻(ハーブ)&カンナビノイド医薬品(製薬)の両方を含む学問領域のこと。

 

目次

なぜ医療従事者がカンナビノイド医学を学ぶべきか

 

 

6.カンナビノイド医学を学ぶべき医療従事者は360万人

 

平成30年厚生労働白書8などによると、日本の医療従事者は約360万人(人口比で約3%)いる。

 

日本臨床カンナビノイド学会では、医師、歯科医師、獣医師の方が所定のカンナビノイド医学講座を学べば、日本臨床カンナビノイド学会登録医となり、薬剤師、看護師などの国家資格を有する医療従事者がそれを学べば、日本臨床カンナビノイド学会登録師となる制度を導入しています。

 

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7.合法化の次:ASTM D37 Cannabis で進む国際標準化

 

1898年に設立という長い歴史をもつASTMインターナショナルという世界最大級の国際規格制定機関(非営利団体)が、2017年にASTM D37 Cannabis 委員会を設置しました。12か国を代表する300名以上のメンバーで構成され、大麻草とその製品に関連する10の技術委員会があります。

 

D37は、合法化が進む国も、合法化が遅れている国も、ASTMの国際規格を導入することで、安全性、品質、信頼性を確保、新興業界のサポート:標準はインフラとなる、世界中の法律・規制への参照になります。

 

2009年からカンナビノイド医学教育プログラムを提供してきたMM411のクリス・ナザレナス代表は、D37.06 人材育成、評価、資格認定グループの会長として参画しています。早ければ来年度にD37.06が国際標準規格化されると、MM411の教育プログラムは、ASTM準拠にバージョンアップを予定しています。

 

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8.質の高い教育をみんなに:誰一人取り残さない

 

20159月、国連全加盟国の全会一致により、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。その中で、人間、地球、繁栄のための行動計画として掲げた目標が、「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の目標と169のターゲットです。SDGs(エスディージーズ)は、「誰一人取り残さない(No one left behind)」社会の実現を目指しています。

 

カンナビノイド医学教育プログラムは、SDGsにおける「4.質の高い教育をみんなに」の目標を実現させ、下記の4.34.4のターゲットに関係します。

 

日本の医療従事者にカンナビノイド医学教育を全く学ぶ機会のないことを解消することは、SDGsの目指す「誰一人取り残さない」という状況の改善に大きく貢献できます。

 

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SDGsには、以下の目標が掲げられています。

ターゲット 4.3

2030 年までに、すべての人々が男女の区別なく、手の届く質の高 い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。

 

ターゲット 4.4

2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きかがいのある 人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。

 

 

9.カンナビノイドの利用は「患者の権利」

 

世界113カ国の医師会が加盟する団体である世界医師会は、1981年に、その基本理念を「リスボン宣言」としてまとめ、その序文には、以下のようにはっきりと書かれています。

 

患者の権利に関する世界医師会(WMA)リスボン宣言(1981年)序文  

医師、患者およびより広い意味での社会との関係は、近年著しく変化してきた。医師は、常に自らの良心に従い、また常に患者の最善の利益のために行動すべきであると同時に、それと同等の努力を患者の自律性と正義を保証するために払わねばならない。以下に掲げる宣言は、医師が是認し推進する患者の主要な権利のいくつかを述べたものである。医師および医療従事者、または医療組織は、この権利を認識し、擁護していくうえで共同の責任を担っている。法律、政府の措置、あるいは他のいかなる行政や慣例であろうとも、患者の権利を否定する場合には、医師はこの権利を保障ないし回復させる適切な手段を講じるべきである。

引用:200510月日本医師会訳 

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世界医師会(WMA)のロゴ

 

この宣言から言えることは、医療従事者が自らカンナビノイドの臨床上の有用性を知り、能動的に大麻取締法を適切なものに変えていく必要性があるということです。患者が法律に合わせるのではなく、法律を患者に合わせていくのが本来の姿なのです。

 

ネット時代において、海外情報が容易に調べられるため、必要とする患者の方が詳しいケースがよくあります。そのとき適切な助言を提供できるよう、医療従事者は、日々研鑽をする必要があります。

 

10.科学コミュニケーション:欠陥モデルから四面体モデルへ

 

今までの厚生労働省及び警察庁は、国際条約及び大麻取締法に基づき、一方的な「ダメ・ゼッタイ」の情報発信をしてきました。一方で、誰でも世界の情報にアクセスできるネット時代において、国の政策は間違っていると、熱心に情報発信する大麻系WEBサイトがあります。これも一方的であり、国および大麻系WEBサイトのどちらも欠陥モデルの科学コミュニケーションです。

 

これからは、カンナビノイド医学教育プログラムを修了した医療従事者が、専門家としての立場で、所属する医療コミュニティだけでなく、③市民、④科学者、⑥政府と双方向なコミュニケーションを積極的に行うことが求められています。そうすることよって、カンナビノイドが利用できる望ましい社会を考える機会を増やすことができるでしょう。

 

 

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まとめ:日本の医療従事者がカンナビノイド医学を学ぶ必要性

 

1.カンナビノイド医学分野は、爆発的な研究の進展がある

2.世界的な合法化が進展している

3.薬理学の教科書にカンナビノイドがない

4.国際的な医学教育の中に、補完代替医療との接点が必須とされている

5.カンナビノイド医療の適用疾患には、日本人の約3分の1の潜在的需要がある

6.カンナビノイド医学を学ぶべき日本の医療従事者は約360万人いる

7.合法化の次に、国際標準化する動きがある

8.持続可能な開発目標(SDGs)4.質の高い教育をみんなに:誰一人取り残さない」を実践する

9.カンナビノイドの利用は「患者の権利」であり、医療従事者に適切な行動が求めらる

10.医療従事者による双方向な科学コミュニケーションは、望ましい社会を考える機会を増やす

 

日本は、医療用大麻が違法だから関係ない・・・これは、グローバルかつフラット化した情報社会において、医療従事者として医学・薬学における人類の科学的進歩を否定することと同じです。

 

カンナビノイド医学/薬理学が日本語で学べる基礎コースがMM411の尽力で開設されました。この記事で見てきたように学ぶ必要性は、十二分にあると思われます。少しでも多くの日本の医療従事者に知ってもらいたいのです。

 

 

<リンク先>

 

MM411 https://medicalmarijuana411.com/ 

MM411は、グローバルマーケットにおけるカンナビノイド医学教育に精通した主要パートナーと協力し合い、カンナビノイド医学教育に取り組む団体を通し、世界各国へカンナビノイド医学生涯教育の認定プログラムを提供するよう努め、現在、アメリカをはじめ、カナダ、フランス、イスラエル、ブラジル、南アフリカで展開しています。

 

日本語版コース  https://medicalmarijuana411.jp/    20201020日開講

 

日本臨床カンナビノイド学会 http://cannabis.kenkyuukai.jp/   

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AUTHORこの記事をかいた人

2015年9月に設立された、カンナビノイドの臨床研究を目的とした学会。編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。
同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。

2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。

2019年7月時点で、正会員(医療従事者、研究者)67名、賛助法人会員12名、 賛助個人会員23名、合計102名を有する。

http://cannabis.kenkyuukai.jp/

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