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ヘンプクリートの権威アレン氏を直撃インタビュー、20年以上にわたる啓蒙と創造を経て

目次

スティーブアレン氏とは?

スティーブ・アレン氏は、国際ヘンプ建築協会(IHBA)の草分け的存在であり、同協会のディレクターを務めています。

彼は、20年以上にわたり世界中でヘンプを使用した建築を行い、ヘンプの建設への活用を推進してきた著者、教師、コンサルタントです。

彼は、「Building with Hemp」(2005年、2012年)および「Hemp Buildings: 50 International Case Studies」(2021年)の著者でもあります。アレン氏はアイルランドのケリー県、ケンメアのルシーンズに住んでいます。

インタビュー

HT:初めてお話したのは2015年のことでしたが、当時、現代の主流建築家の間で自然素材に対する理解は低いとおっしゃっていましたね。現在、建設業界全体でのヘンプに対する認識はどうでしょうか?

Steve Allin氏:認識は拡大し始めています、特にフランス、ベルギー、イギリス、ドイツ、イタリア、オランダなどの国々でヘンプ材料が容易に入手できるようになっています。建築材料やシステムの炭素影響の測定がより正確になるにつれて、ヘンプは他の競合製品のほとんどよりも優位に立っており、その使用はより容易に正当化されるようになりました。

HT:そして、2016年には、いくつかの大規模なプロジェクトが同時に進行すれば、ヘンプ建設が急速に拡大する可能性があると述べられていましたが、その後どのような大規模プロジェクトが実現したのでしょうか?

Steve Allin氏: 確かに急速に進展したとは言えませんが、過去数年間にいくつかの大規模プロジェクトが完了しました。たとえば、スウェーデンでは、大規模なロジスティクスセンターの計画がヘンプファイバー断熱パネルの使用を中心に立ち上がり、これが現在建設中のヘンプ加工および断熱工場の支持につながったようです。

イタリアでは、特定の地域でヘンプクリートを様々な構造物に使用する動きが広がり、イギリスとフランスでは住宅プロジェクトが大成功を収めています。

しかし、メディアは人類に希望をもたらす可能性があるとしても、ポジティブな影響に関するお話にすぐ飽きてしまいます。

そのため、これらのプロジェクトは十分に認知されていないかもしれません。サイズは重要であり、最近の南アフリカのケープタウンに建設された12階建てのホテルは、地元産のヘンプクリートブロックを使用しています。

HT:ヘンプクリートの基本建材、ハードや断熱材用の技術繊維のコストはどのように評価しますか?従来の材料との価格差には進展が見られますか?

Steve Allin氏:ウクライナ侵攻後、初期の石油化学製品の価格上昇が起こり、外部断熱システムのエネルギー消費量の多い発泡体ソリューションの代替手段に対する関心が高まりました。

これは、ヘンプ材料がしばらくの間、そのような有毒な選択肢の代替手段としての認識を高めるのに役立ちましたが、化石燃料産業への巨額の補助金が依然として不公平で非現実的な価格差を維持しています。

少なくとも欧州では、過去20年間でヘンプの価格はほとんど上昇しておらず、合成の代替品と比較されるようになっていますが、施工や建設のスピードはコストの非常に重要な部分です。

HT:ヘンプクリートの応用における最も有望な昨今の進展は何でしょうか?プロセスを加速するためのどのような技術がありますか?

Steve Allin氏:ヘンプクリートの吹き付け施工は今やよく理解された技術であり、特に改修プロジェクトにはより迅速な施工方法を必要としてる建設業者に認められています。

プレハブブロックも広く使用されており、ベルギーのイソヘンプ社(IsoHemp)やイタリアのテクノカナパ・センニー社(Tecnocanapa Sennini)での生産が増加しています。

さらに、フランス、イタリア、ポルトガルなどで最近はより多くの使用例があります。内部建築用品製品、例えば防音壁パネルや天井パネルなどの多岐にわたって増加傾向です。

さらにエキサイティングな製品はヘンプウッドであり、広葉樹林の木材の美しい代替品です。これがより広く製造されるようになると、床材や家具の製造にますます使用されることが予想されます。

私は、ヘンプ材料を使用した革新的技術を組み合わせて、迅速に設置可能なモジュラーシステムに成長すると考えています。

これにより、質の高い手頃な住宅を建設することができます。このようなプレハブモジュラーシステムは、建設プロセス全体に簡単な既製品のソリューションを提供し、あらゆる規模のプロジェクトを監督する建築家やエンジニアにより簡単にアクセスできるようになります。

また、難民となった多くの若者全員がIT関連の仕事に就くわけではないため、彼らが必要とする住宅を建設する方法を学ぶ必要があるため、広範囲なヘンプ建築方法の教育が必要です。

HT:ヘンプ建築セクターが急速な拡大と成長するためには、他に何が必要ですか?

Steve Allin氏:ヘンプや他の自然な作物は蛇口をひねることで生産されるわけではありません。毎年の収穫によって、市場で何が出回るかが決まります。

ただし、現在、ほとんどのヘンプ加工施設は、1日1回のシフトしか稼働していませんので、理論的には出力を3倍に増やすことができます。

契約農家を合理的な増やしていけば、農業部門はそのより大きな供給を養うことが可能になりますが、農家がすでに栽培している作物を代替しても問題ないように、財政的なインセンティブが明確でなければなりません。

ヘンプ畑から良質な原料を供給することなくして産業は成り立たないので、ヘンプ農家が作付けを成功させるために、何が必要かを正確に把握することは重要です。

ここで、ヘンプ農家が頼りにしているのが、最短時間で適切な品質の藁が収穫できるような収穫機会を持つ加工業社です。ヘンプ栽培面積が増えると、やがて農業請負業者が投資し、役割を引き受ける興味が出るでしょう。

これがプロセスの始まりです。

もう1つ極めて重要な問題は、建築家やエンジニアの教育です。彼らは代替材料について非常に少ない情報しか得ていません、特にヘンプのようなものについては。私の個人的な経験から言うと、これらの若い学生の訓練と教育は酷いものです。

彼らの学位の一部である多くの建築基準は、何年も前のものであり、炭素排出削減を材料や占有を通じて二酸化炭素排出削減させるための要素が薄く、包括的ではありません。

講師や学科長は、物事を変えるのが面倒くさいか、自己重要感で満たされているために、何も変えようとしません。建物の設計に関与する専門家達がこれらの代替手段について知らない場合、クライアントがそれらをどのように使えるようになるのでしょうか。

HT:ヘンプクリート建設に直面する国および地方の建築規制は、実際には大きな問題でした。そこで進展は見られていますか?

Steve Allin氏:はい、そうです。世界のあらゆる地域で承認を得ているプロジェクトも明らかに多くあります。それらの承認も現地の規制当局にロビー活動を行うことで頑固な努力によって達成されました。実際にヘンプクリートを見て理解する機会があると、規制当局は承認を喜んで与えることがあります。

アメリカでは、材料の承認システムがEUやほとんどの加盟国とは異なります。アメリカは、素材がどのように使用されるかが、実際の性能よりも重要です。これにより、アメリカヘンプ建築協会がヘンプ材料をASTM基準に挿入するための資金を集めやすくなりました。

一方、ヨーロッパでは、合成材料業界によって設定された一連のパラメータに直面しています。この業界は、現実にはありえないようなテスト環境での実験をし、特に熱伝導率の値(ラムダ値)に焦点を当てています。

これは、建物がどのように設計、建設、または改修されて気候変動やエネルギー使用に対処するかに大きな影響を与えます。

この状況に対処するために、IHBAは欧州産業用ヘンプ協会と協力し、欧州規制機関に提示するパラメータを設定する作業グループで作業しています。これにより、これらのパラメータが建築計画で詳細に説明されることがはるかに容易になります。

HT:ヘンプ栽培者、建設業者、建築業者は、政府が二酸化炭素の削減にますます重点を置いていることからどのように利益を得ることができますか?開発中の財政的なインセンティブはありますか?

Steve Allin氏:現在、この分野には多くの注目が集まっていますが、特に土壌における炭素隔離を完全に正確に測定する方法はまだ確立されていないと思います。

また、大規模な汚染を引き起こす企業が自らの排出を軽減していると偽るためだけに生み出される炭素クレジットには非常に懐疑的です。炭素クレジットは、炭素貯蔵または除去を計上するためのいくつかの異なる方法に基づいて開発されていますが、これらは、作物の栽培、収穫、加工、そして使用の過程がどのように行われているかを徹底的に透明に評価する必要があります。そうしないと、実際に炭素がどれだけ安定しているかを判断することができません。

より重要なのは、建築環境から健康を害することなく、農業の有毒性や有害性を減らし、既存の建物を断熱化することによって節約されるエネルギーや費用のすべてを計測することです。

過去15年間で最も大きな3つの断熱性のある建物、英国のAdnams Brewery配送センター、Wine Society倉庫、オランダのVoorst地域の市役所のヘンプクリートのファサードでは、暖房および冷房費用約650万円から約820万円が、ゼロに削減されました。このようにして、どれだけの排出量を削減できるか想像するしかありません。

編集部あとがき

20年間ヘンプとヘンプクリートの可能性に向き合い世界中に啓蒙と創造を進めてきたアレン氏の現状とこれからが大変よく分かるレポートです。石油産業の代替原料にはまだまだ及ばない規模であっても、その中でも大きな成果を得ている建造物や断熱材、防音壁などがどんどん現れてきました。

「大麻」が原料であるが故の、スティグマ問題は世界共通の課題であり、建築業界も同様で、当局や市民に対するアプローチも、地道なポップアップ(実際に素材を触れる機会)を当局なども含めて行なったりと、草の根活動の結果が如実に現れてきています。

ヘンプの建築素材や脱炭素に対するポテンシャルは、おそらく予想以上の研究成果がでることが期待されていますが、利用者達のヘンプとヘンプクリートに対する知識(学び)とそれらの共有、体験、納得、そして確信に至るまでのポジティブな教育工程が、ヘンプ建築産業が発展するか否かの明暗が分かれます。これは、CBDなども同じですね。

日本でもヘンプクリートを活用しているプロジェクトも少しずつですが耳にするようになってきましたが、それはまだ小さい業界内での出来事で、マスの方々に届くには、まだまだ遠い先の話になりそうです。そのためには、啓蒙活動もセットで進めていく必要があります。更に、原料を輸入に頼る状況なので、コストを下げることが難しく、商業発展させるには難しい面もあります。

これには行政の資金的協力や行政から発信する啓蒙、そして、税制優遇などの制度がある国や地域が世界でもリードしているという背景がありますので、日本の建築業界などの団体が共同でロビー活動をしたり、ヘンプクリート用の試験圃場を用意して、試験栽培場などを展開していくことで、国産ヘンプクリートを自国の建築材料の1つに見出していける形からスタートしていくことが良いように思います。建築専門家による建築素材に特化したヘンプクリート用の畑での実験と研究場と、それらを支援する行政資金。

ヘンプ先進地域には追いつけないからこそ、欧米諸国の先駆者達の知恵を盗み(学び)、日本オリジナルの手法で、日本最高峰のヘンプクリート原料の生産を目指してほしく思います。国産ヘンプクリートに出会える日を、今から楽しみにしています。

最後に、ヘンプクリートからどのような建物ができるのか、気になる方は同氏の著書「Hemp Buildings: 50 International Case Studies」(2021年)」をご覧になってみてはいかがでしょうか。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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