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「ヘンプクリート」~ヘンプの驚くべき利用方法~

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ヘンプクリート・ヘンプ素材の過去と今

ヘンプは、過去においてあらゆる植物の中で最も有用なものとして知られており、その用途の多様さゆえに、何千年もの間、驚異の植物として知られてきました。

最近では、技術発展と継続的な研究の恩恵を受けて、ますます多くの用途が発見されています。

これらの用途の一つ、「ヘンプクリート」だけでも非常に有望であり、この素材を完全に活用するならば、今後数十年にわたって開発される数千ヘクタールのヘンプ栽培と、日本での関連工場を、それだけで賄えるだけではありません。

フランスでは、高品質の建築用断熱製品を生産するために大麻草を使用することが、すでに主要な事業となっているからです。

日本では数千年にわたり、オガラ(ヘンプの茎)が屋根、ロープ、布などに使用されていました。

現代では、ヘンプは建物の壁紙、内壁ボード、そして、オガラと石灰を混合した建材「ヘンプクリート」などにまで用途が拡大しています。

研究者らは電子顕微鏡を用いて、オガラは木繊維のような構造をしていることを確認しました(拡大すると大聖堂の柱のように見えます)が、それに加えて繊維を通る水平孔の網目を含んでいることも発見されています。

ヘンプクリートの特性、どのくらい環境に影響が!?

これは、通常のコンクリートよりも、ヘンプクリートで作られた壁の方が、空気に対する透過性がはるかに高いという独特の性質を与えます。

これにより、ヘンプクリート壁は室外と室内の温度と湿度を穏やかに平衡させ、建物の冷暖房エネルギーを50%以上削減することができます。

ある建築家の発表によると、「使いやすさ」や「大きさ・形の異なる新築ビルへの汎用性」そして「古い建物のリノベーションへの柔軟性」などの魅力を感じる建築家が増えていると言います。

つまり、ヘンプクリートは環境に優しい新しい建材なのです。

正確にいうと、ヘンプクリートは建築構造の強度向上のために使用されるコンクリートに代わるものではなく、むしろ建物の骨格を形成する柱の間で現在使用されているパネル・断熱壁に代わる内装用バルク材です。

ヘンプクリートを実際に作ってみた結果

私が麻布大学に在職中、学生と協力して普通のインスタントセメントミックス(砂混ぜのセメント粉)を購入し、野菜スライサーを使って、オガラを幅約2~10mm、厚さ1~3mm、長さ10~20mmのチップ状に切り込み、水と混ぜて数種類の比率で混ぜ、乾燥させてレンガを作りました。

試行錯誤の末、我々は軽くて強いヘンプクリートのレンガを作ることに成功しました。

ご存知のように、建設業界ではコンクリートを建造物に注ぐ際にはいつでも、液体コンクリート混合物のいくつかのサンプルを標準的な型に入れ、固体をセットし、次いで強度を試験することが求められます。これにより、建物の安全が確保され、保険適用が可能になります。

充分な練習をした後、私と学生達はコンクリート試験所から6本の空の缶を手に入れ、2つの異なるヘンプクリート混合物サンプル(各3本)を作成しました。

その後、試験会社に委託し、標準的な手順に従ってサンプルを乾燥させ、強度試験(破壊検査)を実施しました。

その結果、ヘンプクリートを建築に使用している企業のウェブサイトで引用されている数字とほぼ同じ強度が出ました。初心者でさえもヘンプクリートを簡単に作れることが分かりました。

現在、日本には大規模なヘンプの国内供給者が存在しないため、オガラチップを輸入する必要がありますが、誰でも自由にヘンプを建材として使って大工作業ができます。

海外でのヘンプクリートの販路と環境問題

また、他国では、ヘンプクリート用に通常のセメントよりも強固で耐久性が高いといわれる石灰モルタルを販売しています。

一方で、建設会社がヘンプクリートを使用する場合、日本の環境条件、特に地震や極端な気象条件に適した安全基準を確立するために様々な試験が必要です。また、機械的強度、熱伝導、吸音、吸湿、経時劣化等に加え、実証試験をする必要があります。

他国では、壁や屋根、床下の断熱材にヘンプクリートを使用した建築物が、従来の建築物に比べて50%のエネルギー消費削減を達成したと報告されています。これは大きな進歩です!

日本や他の豊かな国々で使用されているエネルギーの約3分の1が建物で使用されており、その半分を節約することで、人類全体のエネルギー使用量を約1/6削減することができる計算です。

もちろん、ヘンプクリートをすべての新築建物に使用したとしても、すべての建物を置き換えていくには約30年かかりますが、このような大幅なエネルギー効率の改善は驚異的です。

また、ヘンプクリート建築に住む人々は、通常の近代的な建物に比べて気分が良いと言います。これは、ヘンプクリートの持つ室内と外気の温度や湿度の差を平衡化し、空気を清浄することで得られた結果と考えられています。

日本の空いた農地の有効活用にヘンプが最適

おそらく、これと同じくらい重要なヘンプクリートのもう1つのメリットは、日本の農地を復活させる可能性です。日本の農地は、農家の担い手世代(何十年にもわたる貧弱な農業政策のおかげで)が農地を継承しないことを選択するため、年間約1万ヘクタールの割合で農地が放棄され続けています。

ヘンプクリートの使用を奨励し、原料を供給するためにヘンプが広く栽培されれば、最終的には何万ヘクタールもの未利用地が再利用される可能性があります。

現在も含め、これまでの政権は、エネルギーの節約、バイオマテリアルの利用拡大、農村経済の復興に熱心であると繰り返し主張してきました。今こそ政府は、ヘンプ建材導入に必要な基準を確立するために、研究開発を後押しするべきです。

研究施設を日本に創りたい!日本初の大型ヘンプ垂直統合施設

また、ヘンプ栽培の最適化に関する研究にも公費を導入すべきです。種子、油、花、葉、繊維、茎、CBD、および他のカンナビノイドの最適生産のために、既知の1000種のヘンプ株のうちのいくつかを日本で最適栽培するためには、地域的な気候のバリエーション、土壌の種類などを考慮した幅広い研究が必要です。

日本政府は、農業経済衰退の悪循環から地方を救うために、ヘンプは完全に無害な植物であるだけでなく、何千年にもわたって日本の農村生活に欠かせない最も貴重な植物の一つであるという事実に、今こそ直面しなければなりません。

さらに、GHQがヘンプ栽培を禁止したことは欺瞞であり、私たちにとって大きな害でした。2018年には米国でもヘンプが解禁されはじめたように、日本でも同じように進まねばなりません。日本でヘンプクリートを広く使用することは、ヘンプ栽培を禁じた過去の政府の愚策を終わらせる一手になるでしょう。

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パトリック コリンズのアバター パトリック コリンズ 麻布大学 名誉教授

麻布大学・名誉教授。

1952年イギリス生まれ。ケンブリッジ大学で理学と経済学を学んだ後、インペリアル・カレッジの経営学部にて修士号、博士号を取得。日本の麻に興味を持ち、麻が地方を創生し、しかも地球環境にとっても優れたビジネスであるという立場で研究を続けている。

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