長年にわたってヘンプ産業に従事している欧州の生産者は、国際物流の共通した規制が完成していないことで、播種用の品種登録済みの大麻種子の今年度の状況は「不透明かつイレギュラーで、混沌としている」と、ヘンプトゥディに語りました。
なにひとつ正常でも予測可能でもない
国際基準が何も整備されていないため、ヘンプシードのサプライチェーンは、場当たり的かつ自然発生的に成長する場合が多く、不安定な状況が生み出されており、関係者は現状がすぐに解決されるとは期待していません。
はっきりしているのは、カナダ・中国・欧州の登録品種ヘンプシード供給業者は、今後の数年間で米国市場に進出するために競って需要を満たそうとするだろうと、観測筋は述べています。
しかし実際には、それさえも進展が遅いように思われます。
米国での需要と挑戦
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コロラドを拠点とするヘンプ仲介業者で播種用種子や他のバルク製品を販売するHEMPmarket.placeのゼブ・パイス氏は「2018年の播種期向けの種子とクローン苗の需要は、米国内で活況です」と述べた上で、「しかし米国の認定種子が需要を満たすことは事実上不可能というのが実情です」と、ヘンプトゥディに語りました。
また、産業用大麻の栽培を認める米国の各州は農務省を通じて、手間のかかる書類作成が必要な種子輸入を生産業者に義務付けていて、それが種子の取得に対して大きな官僚主義的な課題なっていると、パイス氏は指摘しています。
全米ヘンプ協会(NHA)は、昨年6月米国の生産者が経験した、播種までに種子が到着しないと言う被害を受けた問題を回避するために、登録済み種子の出荷遅延を克服するよう取り組んでいると話しています。
DEAの「遅れる傾向」
「DEA(米国麻薬取締局)のヘンプシード輸入許可書発行が遅れる傾向があるため、これ以上の遅延が起これば昨年同様の状況に陥ります」と、ジェフ・ウェイリングNHA会長は述べました。
同氏によれば、NHAは米国検事当局と直接連携しながら、産業用大麻業界に要望されている種子の輸出や、他の項目を推進していると言います。
HEMPmarket.placeのパイス氏によると、米国で開発された初の認定種子が最近発表されたことは歓迎すべき前進である一方、この新品種の供給は、ほんのわずかだということです。
取引は行われている
取引は行われています。コロラドを拠点とするビジャ・ヘンプと、その関連企業であるインターナショナル・ヘンプ・ソリューションズ(IHS)の両社は、アダムス州立大学との提携を通じて欧州から認定ヘンプシードの輸入取引をしていると語っています。両社は最近、ポーランド国営の天然繊維薬用植物研究所(IWNiRZ)との合意を発表しましたが、パイス氏によると、これらの種子のほとんどは、ヘンプ穀物および繊維産業を構築する取り組みが進行中である、コロラド州サンルイスバレーの地元農家の手に渡るとのことです。
さらなるシステム上の問題
エリカ・マクブライドNHA事務局長によると、播種用大麻種子の州境を超える移動を禁止する連邦政府の管理政策により、利用できる数量が限定されていることが、結果として種子の高値につながり、業界のさまざまな側面に影響を与えるということです。
「銀行やクレジットカードの決済問題と農作物保険の欠如により、作付面積が増えずに費用が高いままなので、それが加工施設への投資を妨げています」とマクブライド氏は指摘し、インフラの欠如によって、生産者が加工業者や製造業者に適合することを難しくしていると嘆きました。
「これは卵が先か鶏が先かという問題と同じで、業界全体に見られます」とマクブライド氏は言います。
欧州が追い求めるCBDが豊富な品種
欧州各地で供給業者は、CBD(カンナビジオール)を生産する種子の需要が高いことを感じると話しています。
「誰もが高濃度なCBD品種を求めていますが、EUではまだひとつも登録されていません」と、認定種子の取引業者であるチェコ共和国の垂直統合型大麻企業、ヘンポイントのハナ・ガブリエロワCEOは述べました。
「そのため、CBD濃度の高い品種の登録種子は無いと、多くのクライアントに色々と説明する必要があります。これらあらゆる認定品種のCBD濃度については、何の保証も無いのです。」
EUの合法栽培品種のリスト上に認定済みの高濃度CBD大麻品種が無い理由は、ほとんどの欧州諸国で見られるTHC(テトラヒドロカンナビノール)の0.2%規制が原因であると、ガブリエロワ氏は指摘します。
「品種登録には種子の収穫量や繊維含有量の項目はありますが、CBD濃度については規定がありません。CBDに関して、今までに品種改良されたものは未だに無く、何も安定していないのです」と彼女は話しました。
フィノラが人気
フィンランドの品種、フィノラは「一般的な生産者にとっては収穫しやすいので、いまだにかなりの人気があります」とガブリエロワ氏は言います。
最もCBDを効率よく回収できる雌株の花への高まる需要を満たすため、イタリアの生産者は雌雄異株の品種を求めていますが、それはおそらく、低濃度THCと高濃度CBDの葉をタバコのように吸う「ノバコ」のブームを満たそうとしているからだと思われます。
その熱狂的な需要は、昨年イタリアとスイスで始まり、両国は共に比較的高いTHC濃度を認めています。スイスは、ヘンプとして最大1%のTHC濃度を有する品種の栽培を容認し、イタリアはTHC許容基準を0.6%に改定しています。
欧州では高濃度のTHCが含まれるクローン苗や種子の販売規定もまだ定められておらず、薬局に卸される医療大麻の生産に必要な原料の基準や法的な登録手続きも、まだありません。
中国に対するオーストラリアの期待
オーストラリアのヘンプシード食品市場が昨年末に開放され、多くの生産者が今年の播種シーズンに向けて耕作地を拡大する計画を持っているのは、主に中国の種子販売者に対する供給への期待があるからです。
中国と他の輸出国がインドのヘンプ産業に巨大な可能性を見出す一方で、許可手続きに関連する制度的障害のため、インド市場は、かなりゆっくりと発展するだろうと情報筋は話しています。(HEMPTODAY 2018年2月4日)
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