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3Dプリント建築にヘンプは使えるのか?豪州研究が示した「加工性向上」と「構造性能の壁」

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強度低下が実用性を制限

ヘンプを3Dプリント用コンクリートに混合すると、明確な機械的トレードオフが生じ、現時点では構造用途としての可能性が大きく制限されることが、オーストラリアの最新研究で示された。

試験では、曲げやひび割れに対する抵抗性が、従来のコンクリート配合と比べて57〜60.6%低下した。一方、圧縮による耐荷重性能の低下は45.9〜54.8%と比較的小さいものの、依然として大きな減少が確認された。

このバランスは重要である。割れやすい材料は、特に層構造を持つ3Dプリント建築において、荷重支持用途で大きな障壁に直面するからだ。

本研究は、Western Sydney Universityの土木工学・材料工学研究者らによって実施され、Journal of Building Engineeringに掲載された。

これは、ヘンプの芯材(ヘンプシブ)を混合したロボット式3Dコンクリートプリント(3DCP)について、概念実証を超えて行われた初の体系的な実験評価である。

同誌は、世界最大級の学術出版社であるエルゼビアが発行する、査読付きの建築・材料分野の専門誌である。

科学的背景

実務上、圧縮強度とは壁や屋根などがどれだけの重量を安全に支えられるかを示す指標である。

一方、曲げ強度は、たわみやひび割れへの耐性を示し、パネルや3Dプリント壁、層間接着において極めて重要な要素だ。

本研究では、曲げ性能の低下が圧縮性能よりも顕著であり、プリント層の界面でひび割れが生じるリスクが高まることが示された。

研究チームは、標準的なコンクリート配合に含まれる砂の一部を、ヘンプシブ(麻茎の木質芯)で置き換えた配合を作成した。砂の1〜4%をヘンプに置換している。

従来配合と比べ、ヘンプを混合した材料はプリンターノズル内での流動性が約16.7%向上し、積層の安定性には大きな影響を与えなかった。

しかし、この加工上の利点は大きな機械的代償を伴っていた。

強度低下はプリント方向に関わらず確認され、3Dプリント建築に共通する問題──プリント方向による性能差──を浮き彫りにしている。

限定的な環境メリット

本研究で用いられたヘンプ含有量(砂の1〜4%置換)では、環境面の利点はあるものの限定的である。

ヘンプ芯材は生物由来炭素を固定し、採掘資源の使用をわずかに減らすが、最大の環境負荷源であるセメント量は実質的に変わらない。そのため、この配合を低炭素、あるいは気候ポジティブと評価することはできない。

また、伝統的なヘンプクリートで見られる「健康的な建築材料」という主張も、この低含有率では当てはまりにくい。

植物粒子は完全にセメントマトリクス内に封じ込められ、室内空気質、調湿性、居住者の健康に意味のある影響を与えるとは言い難い。

この研究の主な価値は、短期的な環境効果ではなく、少量の植物材料が自動化3Dプリントシステム内で機能し得ることを示した点にある。これは、将来的にバイオ含有率を高めるための初期段階として重要である。

冷静な示唆

投資家の視点から見ると、その示唆は厳しい。

構造用コンクリート製品は、従来の打設コンクリートを前提とした厳格な建築基準や認証要件を満たす必要がある。

曲げ耐性が大きく低下する材料は、認証プロセスが長期化し、保険会社、規制当局、構造設計者からの抵抗にも直面しやすい。

研究では、ヘンプシブの前処理や粒径分布の最適化による改善の可能性も示唆されているが、それは加工の複雑化とコスト増を伴う。結果として、従来材料に対する経済的優位性は縮小する可能性が高い。

用途は限定的

短期的には、ヘンプ混合3Dプリントコンクリートは、非耐力用途──間仕切り、断熱要素、建築的装飾部材など──に適していると考えられる。これらはひび割れリスクや構造認証要件が比較的低いためだ。

本研究は、ヘンプが自動化3Dプリントシステムで使用可能であることを確認する一方で、厳格な建築規制下にある耐力構造用途においては、「技術的に可能」と「商業的に成立」の間に大きな隔たりがあることを明確に示している。

編集部あとがき

今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

1.加工性は向上するが、構造性能は大きく犠牲になる

本研究は、ヘンプシブを混合することで3Dプリント時の流動性が向上する一方、材料として最も重要な曲げ性能が大幅に低下することを示した。「プリントしやすい」ことと「構造材として使える」ことは、現時点では両立していない。

2.問題は圧縮強度より“曲げ・ひび割れ耐性”にある

圧縮強度の低下は一定範囲に収まったが、曲げ強度は最大60%超の低下を示した。3Dプリント建築では層間の結合が要となるため、曲げ性能の弱さは割れ・剥離リスクを直接的に高める致命的要因となる。

3.低炭素・健康建材と呼ぶには含有率が低すぎる

砂の1〜4%をヘンプに置き換えたレベルでは、セメント使用量はほぼ変わらず、環境負荷削減効果は限定的だ。伝統的なヘンプクリートのような調湿性や室内環境改善といった価値も、この配合では期待できない。

4.商業化の入口は「非耐力用途」に限られる

本研究は、ヘンプが3Dプリント材料として技術的に機能することは示したが、建築基準や保険、構造認証を要する耐力用途への道は遠い。当面の実用領域は、間仕切りや装飾部材など、構造性能を厳しく問われない用途に限定される。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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