書籍「H is for HEMP」の著者で環境活動家のMaren Krings氏
ドイツの製紙会社が、デジタル印刷で制作される書籍やパンフレットなどの用紙として使うことが可能なヘンプ製用紙を開発しました。
ドイツ・ダッセルの伝統的な製紙会社であるHahnemühle社が、化学薬品で表面加工を行なわない特別に開発した非塗工紙を、2022年4月に出版される、写真家であり気候変動の影響を伝える活動家Maren Krings氏の書籍「H is for HEMP」の製本用に、この用紙を開発しました。
Hahnemühle社の事業部および製品開発マネージャーであるHeidemarie Hinger氏は、「これは環境に配慮した印刷用紙として、ヨーロッパで栽培された持続可能なヘンプ繊維を使用した初めての紙です」と述べています。
サスティナブルに拘りつつ機能も兼ね備えたヘンプ印刷用紙
この新しいヘンプ紙は、Hahnemühle社が創業以来、ドイツ中北部のザクセン州の自然保護区にある唯一の生産施設で長年使用してきた純粋な湧き水を使い生産されています。
製紙工程では、この湧き水が使われ、化学洗浄剤、殺菌剤、防腐剤などは一切使用せず、ほぼ密閉された空間で製紙処理を行ない、処理水を汚さずに近くの川に放流します。また、製紙工程で使用されるエネルギーは、100%再生可能な資源のみで調達するなど、最大限に環境への配慮を行なっています。
Hahnemühle社のヘンプデジタル印刷用紙は、ウールフェルトなどで使われる製造方法と同じで、特殊な構造を持ち、ヴィーガンであり、アシッドフリー(中性)であるため、経年劣化にも強いという特徴を兼ね備えています。
表紙は280gsm、中紙は80gsmの2種類のグラム数があり、最大50インチ(127cm)までロール状での供給が可能です。また、この新しいヘンプ紙は、高速インクジェット、アナログ印刷、その他の様々なデジタル印刷に対応できる様に設計されています。
Maren Krings氏のプロジェクトから着想を得たこの紙は、文字や画像の表現において高い基準を満たしているとHinger氏は述べています。
著者のKrings氏は「このヘンプ紙は、私の期待を上回るもので、とても美しい触感と感覚をもたらし、書籍に新鮮さと全く新しい印象を与えてくれました」と語っています。
また「同時に原生林などの自然環境の保護にも繋がり、製紙用原料の代替品を探し続けるというループを終わらせることができます」と述べました。
1584年創業の歴史的な製紙会社
ドイツのダッセルにあるHahnemühle社の工場(撮影:Krings氏)
Hahnemühle社は、1584年に機械を使わない手漉きの筆記用紙メーカーとして設立され、その後、アート用紙や、最近ではデジタルファインアート印刷の用紙をラインナップに追加するなどして、常備するポートフォリオを充実させてきました。
Hahnemühle社は、高品質な画像のプリントや美術品の複製など、デジタルファインアート紙を最初に作った企業であり、この分野の世界的なリーダーです。同社は、英国、フランス、米国、シンガポール、中国に子会社を持っています。
同社は、2008年から「Green Rooster」政策を行なっており、地域および国際的な環境保護プロジェクトを支援するなど、森林再生、動物福祉、環境教育プログラムをサポートしています。
Krings氏の著書では、産業用ヘンプを現代的なカルチャーとして写真やストーリーで綴り、百科全書の形で紹介しており、産業用ヘンプが経済発展の原動力となる可能性を示すと同時に、気候変動を食い止めるという重要な役割を担っていることを伝えています。
書籍『H is for Hemp』のサンプルページ:最新情報はこちらから。
引用元;https://hemptoday.net/specialty-hemp-based-paper-is-breakthrough-for-digital-printing/