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厚生労働省の「嘘」大麻の有用性を隠した瞬間<後編>

厚生労働省の「嘘」大麻の有用性を隠した瞬間<後編>
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「これは厚労省の虚偽だけに留まりません」

これは厚労省の虚偽だけに留まりません。 都道府県知事にはヘンプ栽培を許可する権限があります。 しかし、知事らは厚労省の担当者が、決定権限があると誤解しています。ヘンプ栽培が免許制となっている理由は「大麻の氾濫による保健衛生上の危険を防止するため」です。ところが、「どのような危害があるのか」「誰に対する危害なのか」と問うと、厚労省官僚は「危害の程度などについて検討等を行うことが必要とは認められない」と回答します。このような稚拙な回答は政府の機能不全と言わざるを得ません。知事達は、この現状を認識していないのです。そして知事の周辺のスタッフは、厚労省の名前でナンセンスな公式回答を発表してしまうのです。

仮に、産業用ヘンプを栽培することに(架空の)「危険」があるのかと質問する場合、ヘンプから莫大な利益が期待できるにもかかわらず、厚労省は「大麻の栽培によって得られる利益や危害を評価し、比較することは審査基準とはしていない」と主張します。これは大きなスキャンダルであるべきです。なぜなら、コスト、リスク、政策への恩恵を比較検討することなく政策決定することは、通常は不可能だからです。

例えば、政府が「自動車は年間3000人の日本人を殺しているため、今年は車、トラック、そしてバスを違法にします」と発表することを想像してみてください。毎年3000人もの日本人が自動車事故で死亡していることは衝撃的な悲劇です(そして警察はそれを減らすために絶えず尽力しています)。しかし、興味深いことに、自動車がもたらす利益は非常に大きく、年間3,000人もの死者数を出しているにもかかわらず、その悲劇よりも利益が優先されているのです。10年ごとに3万人の死者を出している訳ですが、自動車に対して今まで規制キャンペーンが行われたことはありません。自動車の使用を禁止することはせずに、 「ヘンプは害を及ぼすので、私たちはそれを禁じます」と言うことは、たとえヘンプが害をもたらすとしても、それがもたらす利益を考慮しないという、とても馬鹿げたことなのです。

厚労省の「産業用ヘンプ栽培を規制することは日本人を保護する」という主張は、全くもって無価値です。厚労省は他のOECD諸国の政府の判断は間違っており、日本の厚労省だけが正しいとしていますが、これには何の科学的証拠もありません。近年の、他のすべての国の成功経験によって、この主張が全くナンセンスであることがわかります。

さらに重要なのは、コストや日本人に対しての利益が考慮されることなく実際の政策が決定されている点です。厚労省は、政策がだれかの利益を得るために作られていることを認めています。しかし同省は、経済や日本の人々の健康、そして環境や新しいビジネスチャンス、国内の農業、農村生活をよりよくするための合理的な政策を作ることを避けています。一体誰のための政策を作っているのでしょうか?

これまで過去70年間のヘンプ規制の歴史のなかで、コットンや化学繊維 、農薬、化粧品、食用油、合法・非合法薬物まで、ヘンプと競合する様々な既得権益 が成長しました。そして、我々はこれらの既得権益は、官僚の天下り先のための潜在的な資金源であることを覚えておかなくてはなりません。

その中でも1つの業界に注目が集まっています。アルツハイマー病及びその他の精神疾患用の医薬製造業界です。これらの売上高は年間2000〜4000億円に達しました。つまり、201441日の国会答弁以降、すでに1兆円の医薬品販売が既得権益として守られています。1兆円でどれだけの天下り先が確保されたのでしょうか?

「情報収集の逃げ道」

幸い、この問題に対する迅速で簡単な解決策はあります。201441日の国会答弁では、政府関係者は「情報収集」を継続すべきであることに満場一致で賛成しました。「情報取集」開始から約5年。政府が厚労省に、その結果を出すよう命令するには十分な時間が経ちました。 201441日の国会答弁に価値があったとするならば、農林水産大臣は「情報収集」の結果を要求しなければなりません。

繰り返しますが、日本で産業用ヘンプを栽培することが危険ということは全く根拠がありません。アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、中国、オーストラリア、ニュージーランド、あるいはその他のヘンプ製品を日本に輸出する国において、ヘンプの栽培が危険でないことが明らかだからです。厚労省が産業用ヘンプは害を及ぼす可能性があるという科学的証拠を見つけられない一方、2014年には、ヘンプから広範囲の医学的およびその他の恩恵が得られる証拠がアメリカおよび他のすべてのOECD加盟国で注目を浴びるようになりました(特に、産業用ヘンプがアメリカで2013年に研究栽培が合法化となった後)。ヘンプの利点は非常に大きいのです。THC高含有の品種でさえ多くの国で非犯罪化されています。その多大な恩恵が、少量の害を上回ることが認識されています。

すべての政府の政策は、政治家や官僚の利益ではなく、科学的根拠に基づいている必要があります。政府はヘンプの利点および無害性についての真実を公にすべきですし、日本国民に最大の利益をもたらすために次の3つのステップを踏むべきです。

これからの政策ステップ1、2、3

これらの3つのステップは過去の記事で繰り返し主張しています。官僚も政治家も「知りませんでした」などと言い訳もしないでしょう。何よりも、とても簡単で、OECDに既に実行されていますから、長い討論に時間を無駄にする必要はありません。

政策1:都道府県知事に農業従事者 あるいはヘンプ栽培を希望する良識ある市民への栽培許可証の供与を直ちに奨励する。産業用ヘンプとは異なる品種の大麻 (ヘンプと見た目は似ていますが、科学的、遺伝的には異なるの栽培の防止を警察と協力して行う。 また、政府は知事に対して否定的な印象操作をしないことを加えるべきである。

政策2:大麻取締役法は、米国連邦政府が更新した内容と同様に更新されるものとする。

その更新内容とは2013829日、簡素な表現で、産業用ヘンプ(国際安全基準に基づく)は麻薬ではないので、法規制の対象外とするという内容です。これにより、農業従事者や企業は、今日使用されているヘンプの種子、茎と繊維だけでなく、花穂や葉など全ての部位を利用することができるようになる。これは多くの新製品やサービスを開発する機会を増やし、厚労省から産業用ヘンプの管轄責任を、本来あるべき所管庁である農水省に返却することになる。

政策3THC製薬もまた大きな医学的価値があるため、厚労省は日本企業がTHCを含む医薬品を製造することを奨励するための規定を迅速に策定するよう定める

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パトリック コリンズのアバター パトリック コリンズ 麻布大学 名誉教授

麻布大学・名誉教授。

1952年イギリス生まれ。ケンブリッジ大学で理学と経済学を学んだ後、インペリアル・カレッジの経営学部にて修士号、博士号を取得。日本の麻に興味を持ち、麻が地方を創生し、しかも地球環境にとっても優れたビジネスであるという立場で研究を続けている。

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